有楽町線分岐線と東西線結ぶ「車庫線」整備? 計画図に謎の「出っ張り」



東京メトロ有楽町線の分岐線・豊洲~住吉(東京都江東区)の事業着手が決まり、着工に向けた準備が進められている。東京メトロは今年2022年3月、同区間の第1種鉄道事業許可を取得。8月には東京都が都市計画素案を公表し、豊洲駅のホームを増設する改良計画も明らかになった。

有楽町線分岐線の車両基地としても活用することが考えられている有楽町線の新木場車両基地。【撮影:鉄道プレスネット】

この過程で注目されたことの一つに、有楽町線分岐線と東京メトロ東西線の深川車両基地をつなぐ「車庫線」がある。

江東区は2016年度、有楽町線分岐線の調査報告書を公表。これは同区が想定した建設ルートや駅の数・位置に基づき、概算事業費や利用者数、整備効果などを試算したものだ。この報告書の平面図と配線図では、豊洲駅から「ST1」「東陽町駅」「ST3」を経て住吉駅に至る建設ルートと「ST1」から分岐する「深川車庫入出線」が描かれ、その行き先は「深川車両基地」と記されていた。

「ST1」は枝川駅(仮称)、「ST3」は千石駅(仮称)に相当。枝川~深川車両基地を結ぶ車庫線の整備を想定していたことが分かる。

江東区調査報告書の平面図と配線計画図。ST1(枝川駅)と深川車両基地を結ぶ車庫線が描かれている。【画像:江東区】

しかし、東京メトロが国交相に提出した鉄道事業許可申請書には枝川~深川車両基地の車庫線に関する記述がなく、8月に公表された都市計画素案の計画図にも車庫線は描かれていなかった。車庫線は江東区の想定でしかなかったことになる。

都市計画素案の平面図。車庫線は描かれていない。【画像:東京都】

ただ、都市計画素案の計画図には少し気になる部分がある。枝川駅の東陽町寄り北側には、弧を描いて線路敷地の幅が徐々に広くなっていく「出っ張り」が設定されている。線路が分岐する部分のようだ。

都市計画素案の計画図(一部)。枝川駅の東陽町寄りに弧を描いた「出っ張り」があり、その先に東西線の深川車両基地(右)がある。【画像:東京都】

保守用車両を留置するための線路スペースの可能性もあるが、この「出っ張り」から北東へ約380m進んだところには深川車両基地がある。ここから分岐して車両基地につなげるのはさほど難しくはないだろう。だとすれば「出っ張り」は将来の車庫線の整備を想定した分岐部の準備空間のようにも思える。

東京メトロに取材したところ、「出っ張り」には「鉄道運行上必要な駅施設」などを設置するとし、車庫線分岐部の準備空間として整備することは否定。「江東区の調査報告書に車庫線の記載があることは認識しているが、現段階では(車庫線の)計画はない」としている。有楽町線分岐線の車両基地は「新木場車両基地の活用を考えている」と話した。

有楽町線分岐線は2030年代半ばに開業の予定。当面は都市計画と環境影響評価の手続きが進められ、数年後には着工の見込みだ。

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