東洋活性白土のSL「1号機」動態復活、新潟・糸魚川から成田ゆめ牧場まきば線へ



観光牧場「成田ゆめ牧場」(千葉県成田市)の遊覧鉄道「まきば線」で蒸気機関車などの保存活動を行っている鉄道愛好者団体「羅須地人鉄道協会」は12月16日、協会創立50周年・まきば線着工30周年の記念式典をまきば線の車両基地で開催した。かつて新潟県内の工場の専用線で使われていた蒸気機関車も、動態復元された姿で披露された。

動態復活した東洋活性白土の1号機。【撮影:草町義和】

新たに動態復元された蒸気機関車は、東洋活性白土(新潟県糸魚川市)が保有していた「1号機」。動輪2軸、整備重量6tの小型タンク機関車で、羅須地人鉄道協会によると製造時期や製造メーカーは不明だが、フランスのドコービル社が製造した蒸気機関車のコピータイプという。

創立50周年・着工30周年のヘッドマークを取り付けた1号機。【撮影:草町義和】

式典では火が入った状態で1号機が披露され、先頭に向かって左側の側面に車両番号「1」の取付作業を行って復元作業を完了。その後テープカットが行われ、井笠鉄道の鉄道線(岡山県、1971年廃止)や西武山口線で使われていたホハ5客車と無蓋車を牽引し、関係者を乗せてまきば線を数周した。

車両番号「1」の取付作業。【撮影:草町義和】
1号機のテープカット。【撮影:草町義和】
まきば線を走る、もと東洋活性白土1号機。【撮影:草町義和】

12月17日は、一般向けのイベント「まきば線まつり」が12時から15時まで開催される。羅須地人鉄道協会は修理中などで動かすことができない車両を除き、同協会が保有するすべての蒸気機関車を運行するとしている。

「まきば線まつり」では動ける状態の蒸気機関車をすべて走らせる計画。【撮影:草町義和】

東洋活性白土は吸着剤などに使われる活性白土などを製造、販売していたメーカー。原燃料や生産品を運ぶため、国鉄糸魚川駅から延びる引込線と工場を結ぶ全長約800mの専用線を保有していた。軌間は国鉄線の1067mmに対し専用線は610mmで貨車の直通はできず、引込線と専用線の接続地点に積替施設を設置。蒸気機関車の1号機と2号機が工場と積替施設のあいだを往復していた。

1982年、東洋活性白土が解散して専用線も廃止に。1号機はその後しばらく糸魚川市内で保存されていた。1999年、かつて東洋活性白土専用線を借りる形で蒸気機関車の動態保存活動を行っていた羅須地人鉄道協会が1号機を引き継ぎ、まきば線へ。ボイラーを新造するなど大規模な修繕を行い、20年以上かけて動態復活を遂げた。一方、「くろひめ号」と呼ばれた2号機は現在、糸魚川駅に併設された交流施設内で静態保存されている。

まきば線は成田ゆめ牧場内に設けられた、610mm軌間の遊覧鉄道。東洋活性白土専用線の廃止で新たな活動拠点の場を探していた羅須地人鉄道協会が、成田ゆめ牧場の協力により1周約500mの環状線を1993年から1996年にかけ建設した。

成田ゆめ牧場内に敷設されたまきば線。【撮影:草町義和】
まきば線にはティンバートレッスル橋もある。【撮影:草町義和】
通常はディーゼル機関車牽引の列車(右)が運行されている。【撮影:草町義和】

通常は成田ゆめ牧場がディーゼル機関車牽引の列車を運行しているが、春と秋を中心とした10日程度は羅須地人鉄道協会が保有する蒸気機関車が運行されている。

※動画を追加しました。(2023年12月18日8時50分)

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