気仙沼線と大船渡線の不通区間、4月1日付け廃止 7カ月前倒し、震災から9年で決着



JR東日本は1月31日、東日本大震災の影響で一部の区間が不通になっている気仙沼線(宮城県)と大船渡線(宮城・岩手県)について、不通区間の鉄道事業廃止の繰り上げを国土交通大臣に届け出た。新しい廃止予定日は4月1日。当初の予定より7カ月ほど前倒しされる。

バス専用道に改築された気仙沼線の線路敷地を走る気仙沼線BRT。【撮影:草町義和】

JR東日本が廃止の前倒しを届け出たのは、気仙沼線の柳津~気仙沼間55.3kmと、大船渡線の気仙沼~盛間43.7km。両区間とも「気仙沼線BRT」「大船渡線BRT」として、バス高速輸送システム(BRT)による代行輸送が行われている。

JR東日本は昨年2019年11月12日、両区間の鉄道事業を1年後の今年2020年11月13日付けで廃止することを国交相に届け出ていた。これを受けて東北運輸局は今年2020年1月9日、JR東日本や沿線自治体からの意見聴取を実施。国交相は1月29日、廃止日を繰り上げても利便性に問題ないとJR東日本に通知し、同社は廃止日の繰り上げを届け出た。

気仙沼線BRTと大船渡線BRTは4月1日から、正式な代替交通機関に移行。気仙沼線の前谷地~柳津間と大船渡線の一ノ関~気仙沼間は引き続き鉄道が維持される。このうち前谷地~柳津間は鉄道に並行してBRTも運行されているが、これも現状のままだ。

気仙沼線は前谷地~柳津~気仙沼間72.8km、大船渡線は一ノ関~気仙沼~盛間106.7kmを結ぶJRのローカル線。このうち、太平洋岸に沿って線路が敷かれていた柳津~気仙沼間と気仙沼~盛間は2011年3月に発生した東日本大震災の津波で路盤や橋りょうが流失し、 復旧のめどが立たなくなった。

両区間はもともと利用者が少なかったうえ、復旧にも膨大な費用がかかることから、JR東日本は代行輸送機関としてBRTを導入。被害が比較的少なかった一部の線路をバス専用道に改築し、BRTの運行ルートとして活用した。その後、JR東日本と沿線自治体は2016年までに鉄道廃止とBRTの継続運行で合意。バス専用道の整備も進んでいる。

鉄道事業法では、鉄道事業を廃止する場合は廃止日の1年前(貨物運送は6カ月前)までに国交相に届け出なければならないと定めている。その一方、代替交通機関がすでに整備されていることや沿線自治体が廃止に同意しているなどして「(廃止しても)公衆の利便を阻害するおそれがない」と国交相が認めた場合、鉄道事業者は廃止日を繰り上げることができる。

これまでに下北交通の大畑線(青森県、2000年廃止)や小田急電鉄の向ヶ丘遊園モノレール線(2000年休止、2001年廃止)、JR東日本の岩泉線(岩手県、2014年廃止)などが、当初の廃止予定日より前倒しで廃止された。

柳津~気仙沼間と気仙沼~盛間の鉄道の廃止日が決まったことにより、東日本大震災で不通になった鉄道の処遇はすべて確定した。両区間の廃止に先立つ3月14日には、震災と福島第一原子力発電所事故の影響で不通になっていた常磐線・富岡~浪江間が再開する予定だ。

大船渡線BRTの大船渡駅。【撮影:草町義和】