函館本線・長万部~小樽の代替バス「4区間」で運行 これまでの検討状況など明らかに



北海道新幹線の札幌延伸(2031年春開業予定)に伴い廃止される函館本線・長万部~小樽(後志ブロック)について、代替バスの検討が進んでいる。7月7日には北海道や後志ブロックの沿線自治体などで構成される北海道新幹線並行在来線対策協議会の会議が開かれ、これまでの検討状況などが報告された。

函館本線の余市駅。【画像:mynon/写真AC】

報告は代替バスの運行区間として(1)長万部~黒松内(~熱郛)、(2)黒松内~蘭越~倶知安、(3)倶知安~余市、(4)余市~小樽の4区間を設定。運行本数は現在の列車と同等以上を確保するものとした。運行区間は現在の鉄道の利用状況やそれぞれの地域の実情を踏まえたとしている。今回の会議に先立つ3月には区間別の検討会が設置された。

運行ルートは各区間ともニセコバスや北海道中央バスが運行する既存の路線バスに準じたルートを検討しており、沿線の高校などを経由することも考えられている。ただし黒松内~蘭越は既存路線がないため、新たに道道265号や国道5号を通るルートが検討されている。

黒松内・倶知安・余市の各駅は交通結節点とし、このうち黒松内駅と余市駅は乗継拠点の整備を検討。これ以外の駅でも駅舎を活用したバス待合所の設置を検討し、小沢駅では駅舎や跨線橋を活用した鉄道公園などの観光利用が検討されている。

函館本線・長万部~小樽で運行される代替バスの検討ルート(点線はバス路線の新設区間)。【画像:北海道】

代替バスの運行で使用する車両については、電気バスやプラグインハイブリッドバス、燃料電池バスなど「環境配慮型バス」の導入を検討。バスロケーションシステムやICカードの導入も検討する。また、既存駅舎の活用や鉄道施設の有効活用などについてJR北海道の協力を受ける考えだ。

「民宿駅」比羅夫には乗り入れず

代替バスは基本的に現在の駅に乗り入れるか駅付近にバス停を設ける方向だが、一部の駅には乗り入れず、別の場所にバス停を設けるなどの対応も考えられている。

熱郛駅に対応するバス停は同駅から南東約550mの「道の駅くろまつない」に設置し、長万部~黒松内のバスを道の駅まで延伸して乗り入れさせることも検討されている。昆布駅は既存バス停の利用を検討。ニセコ駅周辺では通学時間帯の速達性を考慮し、ニセコ駅に乗り入れるルートだけでなくニセコ駅を経由しないルートも検討されている。

駅舎を活用した民宿があることで知られる比羅夫駅は、報告では運行ルート案から外れており駅前への乗り入れにも触れていない。既存の路線バス停留所で同駅に最も近いのは羊蹄登山口停留所(道路で約1.8km)になる。倶知安駅周辺では倶知安厚生病院(九号線十字街)や倶知安高校前を経由するルートを検討している。

「民宿駅」として知られる比羅夫駅。【画像:中村昌寛/写真AC】

銀山駅は運行ルート案から外れており、同駅から道路で約5km離れた上山道駐車場付近などにバス停の設置を検討。このバス停から銀山方面へのアクセスは仁木町コミュニティバス(ニキバス)での対応を検討している。また、銀山エリアでは無人運転バスの実証運行も検討する。然別駅も同様に運行ルート案から外れており、ニキバスでの対応を検討している。

高速道を活用したルート案も

余市~小樽は「国道ルート」「塩谷駅利用者・高校通学者への利便性を考慮したルート」「塩谷駅利用者の利便性を考慮したルート」「札幌への速達性を考慮したルート」の4案が検討されている。

函館本線の塩谷駅。【画像:写真AC】

「国道ルート」は函館本線にほぼ並行する国道5号を通るが、塩谷駅がルートから外れる。「塩谷駅利用者・高校通学者への利便性を考慮したルート」は余市駅から塩谷駅や小樽環状線を経由して小樽市内に点在する高校付近を巡り、小樽築港駅に至るルート。ただし日中は小樽駅に乗り入れることも検討する。

「塩谷駅利用者の利便性を考慮したルート」は、小樽市内の既存バス路線(塩谷線)を延伸して塩谷駅に乗り入れさせるルートを検討しているが、バス転回場の確保などが課題になっている。

「札幌への速達性を考慮したルート」は高速道路を使って余市~札幌を結ぶルート。余市IC・塩谷IC~札幌西IC・札幌北ICで後志自動車道・札樽自動車を通ることが考えられており、需要見込みなどを把握したうえで検討を進める。

今後は9~10月頃までに中間報告を取りまとめ、来年2023年1月頃にはルート案を提示する方向で検討を進める。

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