函館本線・長万部~小樽「廃止」確定 全長140km「バス転換」余市~小樽も鉄道断念



北海道新幹線の札幌延伸(2030年度末開業予定)に伴い並行在来線としてJR北海道から一部区間が経営分離される函館本線について、北海道・小樽市・余市町の3者は3月26日に協議会を開き、余市~小樽間19.9kmをバスに転換することで合意した。翌27日には同区間を含む長万部~小樽間140.2kmの全9市町が協議会を開き、バス転換に同意。鉄道廃止が事実上確定した。

北海道新幹線(赤)の整備に伴い廃止してバス転換することが事実上確定した函館本線・長万部~小樽間(青)。【画像:国土地理院地図、加工:鉄道プレスネット】

小樽市の迫俊哉市長は「国の支援がないなかで、鉄路を維持するのは難しいということ」と話し、鉄道維持を主張していた余市町の斉藤啓輔町長も「残念ながら並行在来線は廃線になる」としつつ「利用者の便益が下がらないということが余市の第一条件。それが確保できる見通しになった」と話した。

整備新幹線は営業主体となるJRの同意のほか、並行在来線の経営分離について沿線自治体の同意を得ることが着工の条件となっている。北海道新幹線の場合、新青森~新函館北斗間の開業時(2016年)に江差線・五稜郭~木古内間がJR北海道から経営分離され、第三セクターの道南いさりび鉄道が経営を引き継いだ。

現在工事中の新函館北斗~札幌間はJR北海道が2012年4月、函館本線・函館~小樽間の経営分離を条件に建設に同意。翌5月には北海道と沿線市町も函館~小樽間の経営分離に同意した。現在は函館~長万部間の「渡島ブロック」と長万部~小樽間の「後志ブロック」に分割して協議が行われている。

「山線」こと後志ブロックの長万部~小樽間は1903年から1904年にかけ開業。かつては道南エリアの函館と札幌を結ぶ主要路線だった。しかし戦後、太平洋側の「海線」こと室蘭本線・千歳線の整備・改良が進み、函館~札幌間の特急列車は「海線」経由が中心に。「山線」を経由する定期運行の特急・急行列車は1986年までに廃止された。貨物列車も現在は運行されておらず、基本的には普通列車が走るだけのローカル線と化した。

長万部~小樽間の輸送密度(2018年度)は623人で、このうち長万部~倶知安間が182人、倶知安~余市間が761人。長万部~倶知安~余市間の沿線町は2月1日までに「第三セクターによる鉄道の存続には多額の財政負担が必要となり、現在の本町の財政状況から考え、次世代に大きな負担を残すべきではない」(黒松内町)などとしてバス転換を容認していた。

輸送密度2000人台でも「将来に渡っての維持困難」

一方、余市~小樽間は2018年度の輸送密度が2144人と比較的多く、余市町も小樽方面への通勤通学客が多いなどとして鉄道の維持を主張していた。

しかし、第三セクター化による余市~小樽間の鉄道維持を想定した調査では、経営分離初年度と想定される2030年度の輸送密度が1412人に。30年後の2060年度には566人まで落ち込むとされた。収支予測でも初期投資に45億4000万円かかり、2030年度の単年度収支は4億9000万円の赤字に。30年間の累積赤字は206億1000万円に上ることが示されていた。

多額の財政負担が生じるのは確実な状況で、「将来に渡って北海道・小樽市・余市町の3者で鉄道を運行することは困難」(迫市長)などとして小樽市と余市町は鉄道維持を断念し、バス転換を受け入れた。今後の焦点は既存の路線バスも含めたバス交通の再編や、線路のバス専用道化などによる利便性の向上策の検討に移る。

函館本線の余市駅。【画像:mynon/写真AC】

ローカル線を維持するための法制度や補助制度が整備されたこともあり、近年は輸送密度が2000人台の路線でも鉄道事業者が単独で維持するか、公的資金を入れて維持するケースが多い。2000人台で廃止になったケースは、ここ20年間では桃花台新交通桃花台線「ピーチライナー」(愛知県小牧市、最終年度の2005年度は2776人)だけとみられる。

整備新幹線の並行在来線は従来、第三セクター化で鉄道を維持するケースがほとんどだった。鉄道廃止・バス転換になるのは、1997年の北陸新幹線・高崎~長野間(長野新幹線)の開業にあわせ廃止された、信越本線・横川~軽井沢間(碓氷峠)以来、2例目になる。

《関連記事》
函館本線・長万部~小樽の保留3町「鉄道廃止」受け入れ 小樽市も「バス視野」
北海道新幹線の札幌駅「東改札」整備が正式決定 デザイン案公表、LRTなどと連絡も