函館本線・長万部~小樽の保留3町「鉄道廃止」受け入れ 小樽市も「バス視野」



北海道新幹線の整備に伴う並行在来線の経営分離について、函館本線・後志ブロック(長万部~小樽)の沿線自治体で態度を保留していた1市3町のうち、黒松内・蘭越・ニセコの3町が鉄道を廃止してバスに転換する案を受け入れる方針を2月1日までに固めた。小樽市もバス転換を視野に入れて動く考えを示しており、沿線自治体で鉄道維持を明確に求めているのは余市町だけになった。

函館本線・後志ブロック(青)の沿線自治体の方針。【画像:国土地理院地図、加工:鉄道プレスネット】

黒松内町の佐藤雅彦副町長(町長職務代理)は1月25日、次回の沿線自治体会議でバス転換案を支持する方針を表明すると発表。「第三セクターによる鉄道の存続には多額の財政負担が必要となり、現在の本町の財政状況から考え、次世代に大きな負担を残すべきではない」と判断したという。

蘭越町の金秀行町長も2月1日、全線バス転換方式を同町の方針とすることを次回の沿線自治体会議で表明すると発表。金町長によると、第三セクターで鉄道を維持する場合、町の負担分として初期投資に約8億5000万円、単年度収支では約1億2700万円がかかる。一方でバス運行の場合は、初期投資が町負担額で約1億2000万円、単年度収支では約400万円になり、鉄道維持より大幅に負担が減る。

このため金町長は鉄道維持について「限られた予算の中で、鉄路のコストが次世代への大きな負担」「現在の町独自の町民サービスにも影響を及ぼすことは必至」とし、「将来に渡って持続可能な住民の足をどう確保していくのかを考えた場合、全線バス転換方式で運行して行く事が現実的であり、最善の方法」とした。

函館本線の蘭越駅。【画像:中村昌寛/写真AC】

ニセコ町の片山健也町長は1月28日にバス転換の受け入れを発表。並行在来線が毎年20億円を超える赤字を計上し続けていることや、維持する場合は152億円を超える初期投資が必要なこと、30年間運行した場合の赤字総額が864億円を超える見込みであることを挙げ、「多額の負担をこれ以上、後世に強いることは、できない」とした。

一方、小樽市の迫俊哉市長は1月31日の記者会見で「(2月に開催する)住民説明会を行ったあとで方針を決定したい」とし、引き続き態度を保留。その一方で迫市長は「これから人口減少が進んでいく中で、財政負担を考えますと、バス転換を視野に入れた動きということを進めたいと考えています」と話した。

函館本線は北海道新幹線・新函館北斗~札幌間(2030年度末開業予定)の並行在来線として函館~長万部~小樽間がJR北海道から経営分離される。沿線自治体の議論は函館~長万部間の「渡島ブロック」と長万部~小樽間の「後志ブロック」に分けて行われている。

このうち後志ブロックは昨年2021年12月をめどに結論を出す予定だったが、同月の沿線自治体会議で余市町が小樽方面への通勤・通学利用者が多いとして鉄道維持を主張する一方、長万部・倶知安・共和・仁木の4町はバス転換を容認する意見を表明。黒松内・蘭越・ニセコの3町と小樽市は議会や住民への説明の時間が必要として態度を保留し、結論が先送りされていた。

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