北海道新幹線「工事」どこまで進んだ? 「日本一?」もあるトンネルは半分近くに



本州の青森市と北海道の札幌市を結ぶ北海道新幹線。5年前の2016年に新青森~新函館北斗間が開業し、現在は新函館北斗~札幌間が2030年度末の開業を目指して工事中だ。

「日本最長」になるかもしれない渡島トンネルのうち村山トンネル工区。スラブ軌道の道床も姿を見せている。【画像:鉄道・運輸機構/札幌市】

工事区間全体(211.9km)の契約率は今年2021年11月1日時点で81%だが、予定ルートを訪ねても高架橋などの構造物は姿を現しておらず、工事が進んでいるという実感は湧いてこない。しかし、外からほとんど「見えない場所」、つまりトンネル区間の工事はかなり進んでいる。

鉄道・運輸機構が明らかにした工事の進ちょく状況(11月1日時点)によると、トンネル実延長(約169.2km)に対する掘削率は47%で、半分近くの掘削を終えている。トンネルの工区別では40工区中3工区で本坑の掘削が完了し、31工区は本坑の掘削中。残り7工区のうち2工区は作業坑の掘削中で、ほぼ未着工といえる準備中の工区は5工区という。

新函館北斗~新八雲(仮称)間には全長30km超という長大トンネルの渡島トンネルが設けられる。工区別では「村山トンネル他」工区(5365m)で掘削・覆工が完了。すでにスラブ軌道の道床が姿を現している。それ以外の「渡島トンネル」(台場山・天狗他・南鶉・北鶉・上二股・上ノ湯他の6工区、計2万7305m)は8912mが掘削済みで、このうち3228mの覆工が完了した。

工区の名称が「村山トンネル」と「渡島トンネル」に分かれているが、これは当初、二つのトンネルに分けて建設する計画だったため。鉄道・運輸機構によると、両トンネルをつなぐことになっていた橋りょう・高架橋の区間は治山のため大規模な斜面対策が必要なことから、両トンネルを一体化させる計画に変更したという。

ちなみに、一体化した渡島トンネルの全長は3万2675m=約32.7km。これは日本一長い陸上トンネルである東北新幹線・八甲田トンネル(七戸十和田~新青森、2万6455m=約26.5km)を6kmほど上回っている。

2027年の部分開業が予定されているリニア中央新幹線の品川~神奈川県(仮称)間には、渡島トンネルをさらに5kmほど上回る第一首都圏トンネル(約37km)が設けられる。中央新幹線が北海道新幹線より4年以上早く開業する以上、渡島トンネルが日本最長になることはない。

しかし、中央新幹線は大井川の流量減少問題を巡ってJR東海と静岡県が対立。同県内を通過する区間は未着工のままで、2027年に開業できる可能性は極めて低い。中央新幹線の開業が2031年度以降にずれ込めば、渡島トンネルが一時的にでも日本最長になるかもしれない。

なお、中央新幹線は磁気浮上式のリニア鉄道のため、2本のレール上を走る普通鉄道のトンネルとしては渡島トンネルが日本一長い陸上トンネルになる。

ほかのトンネルも多くは掘削中で、長万部~倶知安間の「昆布トンネル(桂台)他」工区(4800m)と倶知安~新小樽(仮称)間の「二ツ森トンネル(鹿子)他」工区(4780m)は掘削が完了した。それ以外のトンネルも掘削率は1~99%と大きなばらつきがあるものの、掘削と覆工が進んでいる。

一方、札幌市街地の地下を通り抜ける札樽トンネル(2万6553m)は、未着工の部分が多い。同トンネルは6工区に分けられており、このうち「石倉他」工区(4505m)の掘削が進んでいる。今年2021年11月1日時点の掘削距離は702m(掘削率16%)だ。

8月31日には「富岡」工区で作業坑となる斜坑(900m)の掘削が始まっており、47m掘削した。「札幌」工区は本坑の掘削に向け準備中。残る「銭函」「星置」「桑園他」の3工区も準備中の段階だ。

北海道新幹線の工事の進ちょく状況(青=本坑掘削完了、赤=本坑掘削中、緑=作業坑掘削中、黒=準備中)。【画像:鉄道・運輸機構/札幌市】

トンネル以外の区間(明かり区間)の工事は、新函館北斗駅と渡島トンネルのあいだに設けられる「市渡高架橋他」工区(461m)が準備中だが、それ以外は手つかずだ。札幌駅ではJR北海道の手により10月から工事が始まったものの、在来線ホームの増設など関連する工事の準備が始まったばかり。新幹線の工事が行われていると実感できるようになるのは、もう少し先のことになりそうだ。

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