大井川鉄道井川線「アプト式30周年」式典とモニターツアー、9月に開催



井川線のアプト式区間に対応した電気機関車のED900形。【撮影:草町義和】

大井川鉄道(静岡県)は井川線の「アプト式鉄道区間」(アプトいちしろ~長島ダム)の開業30周年を記念し、9月4日に記念式典とモニターツアーを行う。

記念式典は10時16分からアプトいちしろ駅で実施。モニターツアー参加者の代表者によるくす玉割りや、井川線のマスコットキャラクター「アルル」「プルル」による発車合図(11時02分発の井川行き)などを行う。

モニターツアーは3種類。いずれも千頭駅を9時13分に発車する井川線の列車に乗り、アプトいちしろ駅で行われる記念式典に参加する。その後、長島ダムを見学する「長島ダムコース」、井川本村の見学や渡船乗車を含む「井川本村散策と渡船コース」、廃止されたトンネルやアプト式電気機関車を見学する「あぷと機関車コース」に分かれる。

参加費用は各コースとも1000円で記念グッズや昼食が付く。定員は「井川本村散策と渡船コース」が10人で、それ以外のコースは20人。申込みは大井川鉄道ウェブサイトの井川線30周年記念ページで受け付けている。

井川線は大井川鉄道大井川本線の終点・千頭駅から井川ダムの近くにある井川駅までを結ぶ、全長25.5kmの鉄道路線。ダム開発の建設資材を運ぶための専用鉄道として1935年に使用開始し、戦後の1959年以降は大井川鉄道の手により旅客列車の運行が始まった。

長島ダムの建設に伴い、同ダム付近の線路を新しいルートで敷き直すことになり、1990年10月2日からアプトいちしろ~長島ダム間1.5kmの新ルートの使用が始まった。新ルートは急勾配になったためアプト式を採用。2本のレールとは別に歯形のレール(ラックレール)を設置し、この区間専用の電気機関車の床下に設置した歯車とかみ合わせることで急坂を安全に走れるようにした。

アプト式の線路。2本のレールのあいだにラックレールが設置されている。【撮影:草町義和】

アプト式鉄道区間の勾配は最大で90パーミル(1000m進んで高さが90m上昇)。2本の鉄レールと鉄車輪を用いる普通鉄道では日本一の急勾配だ。アプト式は1963年まで国鉄の信越本線・横川~軽井沢間(群馬県・長野県)で採用されていたが、現在は井川線が日本唯一となっている。

昨年2020年にアプト式鉄道区間は30周年を迎えたが、新型コロナウイルスの影響を受け式典は延期されていた。

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