北陸新幹線・金沢~敦賀間の開業(2024年春予定)にあわせてJR西日本から経営分離される並行在来線(北陸本線)の福井県内の区間について、福井県や沿線自治体で構成される協議会が地域公共交通計画案を取りまとめた。福井県は9月15日から、計画案に対する一般からの意見(パブリックコメント)を募集している。
計画案では、資産所有区間を敦賀~石川・福井県境間の79.2km、営業区間を敦賀~大聖寺間の84.3kmとした。福井県などが出資する第三セクターが運営し、県境の石川側にある大聖寺駅で、北陸本線の石川県内区間を引き継ぐIRいしかわ鉄道と連絡する。駅の数は大聖寺駅を含め19駅。
特急列車は北陸新幹線にシフトするためなくなるが、普通列車はいまより増やす。区間別の運転本数(現在の本数)は、敦賀~武生間が56本(47本)、武生~福井間が76本(54本)、福井~芦原温泉間が64本(59本)、芦原温泉~金沢間は44本(44本)。武生~福井間では22本の増発が考えられている。JR越美北線の列車は引き続き福井駅に乗り入れる。
福井~金沢間ではIRいしかわ鉄道との相互乗り入れを実施。具体的なダイヤは「新幹線等との乗継ぎにも配慮しながら、増便や快速列車の導入、短編成化による運行の効率化等も含め、IRいしかわ鉄道と調整する」としている。
このほか、沿線市町のイベントなどにあわせて普通列車を活用したイベント列車の運行を検討。「本県独自の特色ある観光列車」も導入し、福井県内の営業区間だけでなくJRの小浜線や越美北線への乗り入れ運行についてJRと協議を進めるとしている。
運賃については、1~5年目は激変緩和のため通学定期をJR現行水準の1.05倍程度に。通勤定期と定期外は1.15倍程度にするものとした。6~11年目は通学定期を引き続き1.05倍程度とし、通勤定期と定期外は1.2倍程度としている。
駅については利便性向上のため、パーク&ライドの拡充や駐輪場の移設・新設、バスなどの二次交通の充実、改札口の新設などを行う。また、「利用者数の増加による収支の改善効果が見込まれる新駅」の設置を検討。当面は福井~森田・武生~鯖江・王子保~武生の3区間で設置に向けた検討を進めるとしている。
福井~森田間の新駅は設置場所として3カ所が候補に挙がっている。武生~鯖江間の新駅はサンドーム福井付近に設置。王子保~武生間の新駅は武生商工高校付近に設けることが考えられている。
並行在来線を運営する第三セクターは2019年8月、準備会社の「福井県並行在来線準備」として設立された。現在の社名は仮の名前のため、今年2021年12月に正式社名の公募を開始。来年2022年3月頃には社名を決め、同年7月頃に正式社名を登記する予定だ。
また、北陸新幹線の開業遅延で並行在来線の第三セクター化も遅れ、開業までの経費が増加(約6億2000万円)することになったため、北陸新幹線の建設主体である鉄道・運輸機構が増加分に相当する金額を第三セクターに出資することになった。
現在の北陸本線の敦賀~石川・福井県境間は、旅客列車が1日102本で、このうち金沢発着が44本。ほかに貨物列車が1日33本走っている。2019年度の普通列車は乗車人数が1日約1万9500人で、輸送密度は約5600人。近年は増加傾向だが、輸送密度は北陸3県のなかで最も低い。
計画案の将来予測では、利用者数は人口減少の影響を受け、開業10年後には1割ほど利用者が減る見通し。利用者数は開業時の2024年度が2万167人なのに対し、10年後の2034年度は約2000人少ない1万8162人とした。
輸送密度も2024年度を5435人としたのに対し、2034年度は9.5%減の4920人と予測。2054年度には、かつての国鉄再建法の存廃ボーダーラインだった4000人を割り込んで3886人、開業50年後の2074年度には3000人を割り込んで2950人になるとした。収支予測も厳しく、2033年度の単年度収支は15億円の赤字になることが見込まれている。
このため計画案では「開業から11年間、開業時の利用者数を維持し、並行在来線の持続可能性を高める」ものとし、1日の利用者数2万人の維持を目標に掲げている。
パブリックコメントは福井県地域戦略部並行在来線課が郵送・ファクス・電子メールで受け付けている。提出の際は住所・氏名・電話番号を明記する必要がある。締切は9月30日。
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