熊本市電の延伸構想、利用者数の見込み「1.3倍」に アンケート結果から需要予測



熊本市は市電の熊本市民病院への延伸構想について、1日あたりの利用者数の見込みが従来の予測より600人多い約2900人になるとの検証結果を12月13日までに明らかにした。熊本市民などを対象に実施したアンケートの結果に基づき、従来とは異なる手法で需要予測を行った。

熊本市電の路面電車。【撮影:草町義和】

アンケートは10月から11月にかけ、熊本市民や益城町民(広崎地区)を対象に合計5600世帯を無作為抽出して実施。9135人からの回答があった。

市電の延伸が必要かどうかとの質問には8058人が回答。「必要だと思う」が57%、「必要ないと思う」が27%、「わからない」18%で、「必要」が過半数を超えた。延伸区間の居住者(1822人)に限って集計すると「必要」が72%に上昇。「必要ない」は19%に減少し、「わからない」は9%だった。

延伸が必要とする理由については、「公共交通が充実が必要」「市電沿線の利便性の向上」を挙げる回答が多かった。一方、延伸が必要ないと回答した人は、「渋滞が今よりひどくなりそう」「事業費が大きくなりそう」などを理由として挙げた。

熊本市はアンケート結果を受け、従来の需要予測を検証。1日あたりの利用者数見込みは基本設計時の試算で約2500人、今年2023年の基本設計修正後の試算ではコロナ禍の影響を反映して約2300人としていたが、アンケート結果に基づく試算では基本設計修正後より600人多い、1.3倍の約2900人とした。基本設計時と比べても400人多い。

利用者の目的別に見た場合、通勤(基本設計修正後1057人→今回試算1019人)と私用(1131人→1207人)は大きな変動はなかったが、通学(102人→657人)が大幅に増加した。

熊本市の市電延伸ルート(一部単線案)。【画像:国土地理院地図、加工:鉄道プレスネット】

熊本市電の延伸構想は、健軍町停留場から陸上自衛隊健軍駐屯地の南側にある熊本市民病院まで約1.5km延伸するもの。実現した場合、朝ピーク時の熊本市民病院~熊本市役所の所要時間は約34分で、自動車に比べ21分短縮されるという。

事業費は概算で複線案が約169億円、一部単線案が約135億円とされている。熊本市は来年度2024年度予算案に実施設計費(4億7000万円)を計上する考え。2029年度の一部開業、2031年度の全線開業を目指す。

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