熊本市電の延伸、一部単線なら事業費の増額「ゼロ」一部区間の先行開業も想定



熊本市は熊本市電を熊本市民病院まで延伸する計画について、9月19日に見直し案を明らかにした。延伸区間の一部を単線で整備することで事業費の増額を抑え、工期短縮と早期開業を目指す。

熊本市電の電車。【撮影:草町義和】

延伸区間は約1.5km。健軍町停留場から熊本県道28号熊本高森線を東進して東野1丁目交差点から北上し、熊本市民病院付近に至る併用軌道を整備する。停留場は東野1丁目交差点の北側(電停1)、東町中学校付近(電停2)、熊本東警察署付近(電停3)、熊本市民病院(電停4)の4カ所に新設することが想定されている。

熊本市電の延伸区間(赤)。【画像:国土地理院地図/加工:鉄道プレスネット】

利用者数は従来の試算で1日あたり約2500人としていたが、見直し案ではコロナ禍の影響を考慮して約2300人に減少するとした。市電の延伸で自動車交通量が1日あたりで約2000台減り、渋滞の緩和を見込む。

概算事業費は従来の試算で約135億円だったところ、見直し案では資材価格や人件費の高騰、円安などの影響を反映し、全線を複線で整備する場合は34億円増の約169億円とした。一方、健軍町停留場周辺と東野1丁目交差点周辺を除く健軍町~東野1丁目交差点の約430mを単線で整備した場合、事業費は従来試算と同額の約135億円に。複線整備に比べ用地確保にかかる時間が短くなり、工期の短縮も図られるという。費用対効果(B/C)は従来の1.2から1.3に上昇するとした。

延伸区間の停留場の位置と単線整備を行う区間。【画像:国土地理院地図、加工:鉄道プレスネット】

熊本市は10月に市民アンケートを実施し、その結果を12月の市議会に報告して議論する方針だ。その後のスケジュールの想定は、2024年度に実施設計と用地取得に着手。2029年度にも健軍町~電停1を先行開業し、2031年度の全線開業を目指す。

熊本市は2018年、市電の熊本市民病院方面への延伸を決定。2020年度に基本設計をまとめたが、コロナ禍対策に集中するため中断した。本年度2023年度から検討を本格的に再開しており、コロナ禍など社会情勢の変化を踏まえて計画の見直しを進めていた。

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