JR東海は6月14日、東海道新幹線にN700S電車を増備すると発表した。地上設備の検測装置を搭載するなど新機能の追加や従来機能の強化を図った改良型になる。

検測装置は改良型N700Sの一部編成に搭載。現在は新幹線電気軌道総合試験車の923形電車「ドクターイエロー」で行っている検査を代替できる。さらに電車線設備の画像を解析して設備の異常を検知する機能や、画像・点群データから軌道材料の状態を詳細に把握できる軌道材料モニタリング機能も追加される。
JR東海によると、改良型N700Sに搭載される検測装置は「ドクターイエロー」と同等以上のデータを高頻度で取得でき、設備の安全性・信頼性が向上。係員が現地で実施している検査業務の一部も代替でき、電気設備・軌道設備の保守作業の省力化を図るという。これにより地上設備の検査は検測専用車両の「ドクターイエロー」から検測装置を搭載した営業車の改良型N700Sに移行。「ドクターイエロー」は2027年以降に検測走行を終了して引退する予定だ。


ほかにも「飛来物検知機能」「バッテリーによる空調稼働機能」「架線電圧維持機能」を新たに追加する。飛来物検知機能はパンタグラフの監視装置に画像解析機能を付加することでパンタグラフへの飛来物の付着などを検知し、運転士や指令所の係員に通知する機能。JR東海はこれにより早期の異常検知が可能になり、重大事故の未然防止につながるとしている。

バッテリーによる空調稼働機能は、N700Sから導入しているバッテリー自走システムを活用して空調を動かす機能。バッテリー自走時に空調を併用することはできないものの、列車を運行できない状況のときは空調を動かすことで車内環境を改善する。また、現在のN700Sは走行中に車両故障などが発生した場合、一部の車両データを指令所などにリアルタイムで伝送しているが、改良型N700Sは伝送する車両データを増やし、運転再開の早期化を図る。
環境負荷軽減策としては、屋根部で使用している再生アルミ部材の適用範囲を約1.6倍に拡大し、車体側面の一部でも使用する。架線電圧を維持する機能も搭載。東海道新幹線の全編成にこの機能の導入が完了した場合、二酸化炭素(CO2)の排出量を年間約1万トン削減できる見込みという。
車内設備は「自動座席転回装置」を搭載し、車内整備作業の省力化を図る。ただしグリーン車と3・6号車は設計上の制約があるため転回装置は搭載しない。
改良型N700Sは2026年度から2028年度にかけ17編成を投入する計画で、各年度の投入数は2026年度が4編成、2027年度が7編成、2028年度が6編成になる。既存のN700Sも飛来物検知機能の追加や車両データ伝送機能の強化などの改造を行う計画だ。

JR東海は2026年度中に東海道新幹線に個室を導入する計画だが、改良型N700Sは個室を標準装備。既存のN700Sも2026年度以降、一部の編成に個室を順次導入する計画だ。
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