福島~米沢間トンネルと奥羽・羽越新幹線の構想を引き続き推進 山形県2020年度予算



山形県は本年度2020年度の当初予算に、福島~米沢間のトンネル整備の早期事業化と奥羽新幹線・羽越新幹線の早期実現に向けた取り組みの費用として1400万円を計上した。

東北新幹線(緑)と山形新幹線(青)のルート。山形県が過去にまとめた調査では庭坂~関根間に短絡トンネル(赤点線)を整備するものとしている。【作成:鉄道プレスネット編集部/国土地理院の地図を加工】

前年度2019年度の当初予算より約1500万円の減少。山形県は沿線の関係する県などと連携してトンネル整備の機運を醸成させるための取り組みを進めるとしている。

福島~米沢間のトンネルは、ミニ新幹線(山形新幹線)の列車も走っている奥羽本線(山形線)の短絡ルートとして整備するもの。この区間は福島県と山形県をまたぐ山岳地帯で急勾配や急カーブが多く、トンネルも短い。

このため所要時間の短縮が難しく、降雨や積雪などの影響でダイヤが乱れやすいなどの問題を抱えていることから、勾配とカーブが緩い短絡トンネルを整備する構想が1990年代後半に浮上した。

山形県の検討委員会が2002年にまとめた案では、福島~米沢間のうち庭坂~関根間に全長約22kmの「新板谷トンネル」を建設。建設費840億円、工期6年で、完成すれば福島~米沢間の所要時間は16分短縮されるとしていた。

一方、JR東日本が2015年から2017年にかけて実施した調査では建設費が約1500億円、工期が約15年で、短縮時間は10分程度。同社は採算性の問題から実現は難しいと見ている。

JR東日本は今年2020年3月、福島駅の改良工事に着手すると発表。東北新幹線と山形新幹線の線路をつなぐ「アプローチ線」を増設することで安定輸送の向上を目指している。2026年度末までには完成する予定。このほか、山形新幹線向けの新型車両としてE8系電車が2024年春に導入される予定だ。

福島~山形~秋田間を結ぶ奥羽新幹線と、富山~新潟~秋田~青森間の羽越新幹線は、いずれも1973年に基本計画が決定されたが、国の財政難や国鉄の経営悪化などにより事実上の凍結状態になっている。山形県は短絡トンネルを標準的な新幹線の規格(フル規格)で整備して将来の奥羽新幹線への転用も想定しているが、この場合はさらに建設費が膨らむとみられる。