国土交通大臣は9月2日、近鉄が申請していた鉄軌道旅客運賃の変更を認可した。近鉄は来年2023年4月1日に運賃を値上げする。改定率は全体で17%。

普通旅客運賃は初乗り(1~3km)が20円値上げの180円。おもな距離帯の運賃(値上げ額)は11~14kmが360円(60円)、51~55kmが1000円(160円)、101~110kmが1740円(300円)、201~210kmが3130円(490円)、241~250kmが3690円(580円)になる。
定期旅客運賃も値上げされるが、平均割引率は通勤定期がいまより0.6%引き下げられて42.2%となる一方、通学定期は1.6%引き上げて82.5%に。近鉄によると、通学定期券の割引率は大手私鉄で最大になるという。一部の路線で設定されている加算運賃(吉野線・湯の山線・鳥羽線・志摩線・けいはんな線)と特急料金(特別車両料金と個室料金を含む)、鋼索線の運賃は改定しない。
コロナ禍の収束で経済状況が変化する可能性を考慮し、今回の認可では2028年3月31日までの期限を設定。運賃改定後の2023年度から2025年度までの3年間、総収入と総括原価の実績を確認するという条件が付けられた。
近鉄は鉄道利用者の減少に伴い運輸収入が減少している一方、安全対策や老朽化した車両の更新などの設備投資が必要として今年2022年4月に運賃の値上げを申請。これに対し近鉄沿線の奈良県が反発し、国交相の運輸審議会が7月に法定公聴会を開催して近鉄社長と奈良県知事から意見を聴取する異例の事態となった。
近鉄は公聴会の開催後、奈良県に対しサービス水準向上策や地域投資策を文書で回答。橿原線・八木西口~畝傍御陵前の新駅整備の条件として挙げていた八木西口駅の廃止を撤回した。奈良県の荒井正吾知事は「(文書の内容は)公述で申し上げた項目をおおむねカバーしている」と評価。運輸審議会は8月30日、認可が適当と答申していた。

近鉄は運賃改定の認可を受け、2023年度から2025年度にかけ総額約530億円の設備投資を計画しているとし、一般車両の更新と車内防犯対策(約180億円)、バリアフリー整備の加速化(約60億円)、次世代の営業機器導入(約60億円)、将来へ向けた技術開発(約30億円)などを行うとしている。
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