東海道新幹線「音声合成ソフト」導入で「肉声」車内放送はどうなる?



HOYA(ホーヤ)のMD部門は8月10日、テキスト文章を音声に変換する音声合成ソフトウェア「ReadSpeaker」がJR東海の「新幹線車内及び駅構内案内の音声に採用された」と発表した。これが報じられたところ、SNSでは「脇坂京子さんとドナ・バークさんの声が聞けなくなるのか?」といった反応が相次いだ。

東海道新幹線を走る列車。【撮影:草町義和】

脇坂さんはテレビ番組などのナレーターとして活躍しているが、東海道新幹線や山陽新幹線、九州新幹線の車内自動放送(日本語)を担当していることでも知られる。ドナさんはオーストラリア出身のシンガーソングライター。東海道・山陽・九州新幹線の車内自動放送では英語版を担当している。

JR東海に取材したところ、「ReadSpeaker」は昨年2020年1月、東海道新幹線17駅の放送用タブレットと乗務員業務用スマートフォンに導入された。このうち新幹線の車内では、「ReadSpeaker」を導入した業務用スマホを車内放送装置に接続して使用している。ホーヤが「採用された」と発表したのは間違いではないが、導入されたのは1年半以上も前だった。

JR東海によると、現在の車内自動放送については引き続き使用する予定という。脇坂さんとドナさんの「肉声」が聞けなくなるわけではないようだ。

現在の車内自動放送を継続使用する一方で音声合成ソフトを導入した理由として、JR東海は異常発生時などへの対応を挙げる。

異常時には通常と異なる案内を行う必要があるため、異常時の状況を想定して複数の案内音声をあらかじめ収録しておかなければならない。しかし「近年の異常時は多様化」(JR東海)しており、それにも限界がある。そこでテキストを読み上げる音声合成ソフトを導入し、異常時でもきめの細かい案内放送を行うことが可能になったという。

ちなみに、「ReadSpeaker」は4カ国語(日本語・英語・中国語・韓国語)の翻訳結果の呼び出しに対応している。JR東海によると、列車内や駅構内などでの自動放送は日本語と英語の2カ国語放送を行っているが、異常時などには必要に応じて日本語・英語に加え中国語・韓国語による放送を実施しているとしている。

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