JR川越線の荒川橋梁「複線化」追加費用は? 架替構想の浮上機に調査・検討進む



埼玉県などはJR川越線・荒川橋梁の架替事業にあわせ、同橋梁を複線化する構想の調査・検討を進めている。本年度2022年度の調査では、既存橋梁の活用の可能性や複線構造の橋梁で整備した場合の追加費用などが示された。

JR川越線の荒川橋梁。【画像:HK-SAN/写真AC】

国土交通省や埼玉県などは2020年11月、「JR川越線荒川橋りょうの複線化仕様での架換えに関する協議会」を設置。昨年度2021年度の調査では、単線の橋梁で架け替えて複線化時に単線橋梁を増設する案や、最初から複線構造の橋梁を整備して架け替える案など5案のメリットやデメリットの調査が行われた。

協議会は2022年1月、この調査結果を踏まえて「現在線と別の位置に架換え、複線化時は既存の橋りょうを補強して活用する案」と「現在線と別の位置に複線構造で架換える案」の追加調査を行うことを決定。同年12月に埼玉県とさいたま市、川越市が調査結果をまとめた。

報告書によると、既存の橋梁は80年以上前の1938年に完成したもので、現在の法令で定められた条件をほぼ満たしていない。部分的には条件を満たしているが橋脚の大規模な改造が必要で、既存橋梁を活用する案では「メリットを見いだせない」とした。

複線構造の橋梁を整備するケースでは2案を調査。現在線の上流側に複線構造の橋脚と橋桁を同時に構築し、複線化時に軌道・架線を増設する案では、追加費用は概算で約50億円になるとした。一方、複線構造の橋脚を整備して架替時は単線桁を架設し、複線化時に単線の橋桁を増設する案では概算約51億円の追加費用がかかるとし、当初から複線の橋桁を整備するより若干高くなった。

荒川橋梁とその周辺の平面図(北は左下)。【画像:埼玉県・さいたま市・川越市】
複線構造の橋脚と橋桁を整備する案の横断面図(オレンジ色は複線化時の増設部分)。【画像:埼玉県・さいたま市・川越市】
複線構造の橋脚と単線構造の橋桁(オレンジ色は複線化時に増設)を整備する案の横断面図。【画像:埼玉県・さいたま市・川越市】

川越線の荒川橋梁は、国が洪水防止策として計画する「荒川第2・3調節池整備事業」の第2調整池の整備範囲にある。調節池の整備にあわせて周囲の堤防の拡張やかさ上げを行うため、現在の荒川橋梁より約4~5m高い橋梁を新たに整備して架け替える計画だ。国交省関東地方整備局とJR東日本大宮支社は2021年7月、基本協定を締結した。

この事業による荒川橋梁の架替は「現状の川越線の機能を補償するもの」として国が整備するため、現在の荒川橋梁と同じ単線構造での架け替えが前提になる。しかし架替構想の浮上を機に沿線自治体から複線化を求める声が高まったことを受け、国交省や埼玉県、さいたま市、川越市が協議会を設置して複線化の調査・検討を進めている。

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