近鉄線の大和西大寺駅「南寄りに移設」か 奈良県など高架化に向け検討進める



奈良県は近鉄線・大和西大寺駅付近の高架化構想について、大和西大寺駅の高架駅を現在の場所より南側に移す形で整備する考えを明らかにした。

大和西大寺駅の近鉄奈良・橿原神宮前寄り。近鉄奈良線と橿原線の線路が平面交差して複雑に絡み合っている。【画像:溝口駅長/写真AC】

奈良県は「線形(ルート)は確定していない」としつつ、線形の一例を図で示した。それによると、近鉄奈良線の高架線は大阪難波寄りから現在線の南側を東進。大和西大寺駅の新しい高架駅も現在地の南寄りに設ける。

近鉄京都線の高架線は、京都寄りから西へ膨らむようにして南下して新しい大和西大寺駅に進入。現在の線路から最大で100mほど離れるとみられる。橿原線は新しい大和西大寺駅から現在の線路に並行する形で高架線を設ける。

近鉄奈良線の大和西大寺~近鉄奈良は、線路を平城宮跡歴史公園の外(南側)に移設。大和西大寺駅から高架線・地上線を進んで大宮通りの地下に入り、地下化済みの近鉄奈良駅に合流するルートが考えられている。地上線と地下線の境界付近には平城宮跡歴史公園の最寄駅となる朱雀大路駅(仮称)を新設することも考えられている。

今回示された図では、いったん大宮通りと交差して大宮通りの南側に入り、ここに朱雀大路駅を新設。その後、大宮通りに重なって近鉄奈良方面に向かうルートが描かれている。高架線~地上線と地上線~地下線の境界位置は示していない。

大和西大寺駅付近で検討されている高架化と移設・地下化で奈良県が示したルートの一例(赤)。【画像:国土地理院地形図、加工:鉄道プレスネット】

奈良県と近鉄は2021年3月、大和西大寺駅の高架化と大和西大寺~近鉄奈良の移設・地下化で合意。2041年の着工と2060年の事業完了を目指している。これにより大和西大寺駅付近にある踏切8カ所を解消し、道路渋滞の緩和や線路で分断された市街地の一体化を図る。

奈良県は今年2023年2月14日に公表した来年度2023年度予算案で「大和西大寺駅の高架化・近鉄奈良線の移設」に1億2500万円を計上。国の連続立体交差事業補助調査の制度を活用し、奈良県・奈良市・近鉄・国で構成される検討会で具体化を図る。調査では「中長期的なまちとインフラのあり方も踏まえた線形」を検討するほか、橿原線の線路沿いにある車両基地(西大寺車庫)の移転の可能性とまちづくりへの活用の検討も行う。

鉄道関係ではこのほか、工事が進むJR大和路線・郡山~奈良の高架化と新駅整備について、事業費やまちづくりの検討などに23億564万を計上。リニア中央新幹線・奈良市付近駅やリニア中央新幹線と関西空港を結ぶ接続線構想の調査・検討にも4500万円を計上した。

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