近鉄奈良線・大和西大寺~近鉄奈良「移設」で合意 踏切解消、線路は平城宮跡の外へ



奈良県の荒井正吾知事は3月25日、国営平城宮跡歴史公園(奈良市)を貫いている近鉄奈良線を移設することで、近鉄と合意したと発表した。線路を平城宮跡の外に移して高架化と地下化を図り、踏切を解消する。

近鉄奈良線・大和西大寺~近鉄奈良間の移設ルートと解消される踏切の位置。【画像:国土地理院地図、加工:草町義和・鉄道プレスネット編集部】

奈良県・奈良市・近鉄の3者は同日、線路移設と高架化・地下化を記載した地方踏切道改良計画を国土交通省に提出。費用負担の考え方などをまとめた確認書も締結した。

地方踏切道改良計画と確認書によると、近鉄奈良線・京都線・橿原線が合流する大和西大寺駅付近は、現在とほぼ同じ位置で線路を高架化。大和西大寺~近鉄奈良間は平城宮跡の外(南側)に線路を移し、奈良県道1号・国道369号(大宮通り)に沿って高架橋と地下トンネルを組み合わせた線路を新たに整備する。同区間の新大宮駅も新しい線路に移る。

総事業費は約2000億円の見込み。国や自治体が事業費の大半を拠出する連続立体交差事業(連立事業)として実施することを想定しており、確認書では国土交通省の「都市における道路と鉄道との連続立体交差化に関する細目要綱」(連立要綱)に基づき、三つの区間に分けて負担割合の基本的な考え方をまとめた。

大和西大寺駅付近の「高架区間(A)」は、近鉄が受益相当額として事業費の約7%を負担。大和西大寺駅から平城宮跡南側に移る部分の「高架区間(B)」は、「著しい平面線形変更」による増加費用として行政側が全額負担する。大宮通り沿いの「地平区間及び地下化区間(C)」は、「鉄道事業者(近鉄)の受益額と受損額を積み上げて鉄道事業者の負担を協議」するという。

このほか、移設後の線路には二つの新駅が計画されている。大和西大寺~新大宮間には平城宮跡へのアクセス駅となる朱雀大路駅(仮称)、新大宮~近鉄奈良間のJR関西本線(大和路線)との交差部付近には油阪駅(仮称)を設けることが考えられているが、新駅の整備は別途協議する。

工事は2041年に着手し、2060年の完了を目指す。工事が完了すると8カ所の踏切が解消されるほか、平城宮跡の敷地内から近鉄奈良線の線路がなくなる。

この8カ所の踏切は2017年から2018年にかけ、踏切道改良促進法に基づき「改良すべき踏切道」に指定。これを受けて奈良県・奈良市・近鉄の3者は2017年4月に連携協定を締結して踏切改良計画の検討を始めた。

大和西大寺駅(奥)の周辺には多数の踏切がある。【画像:DR_AC/写真AC】

奈良県が線路の移設を伴う高架化・地下化を提案したのに対し、近鉄は踏切ごとに対策することを提案して協議は難航したが、昨年2020年7月に奈良県の移設案を基本に協議することで合意。このほど移設案の採用が正式に決まった。