JR東日本は10月5日、東海道線を走行中の列車がコンクリート製の電化柱(電柱)と衝突した事故の原因について、電柱のひび割れから侵入した雨水の影響で内部の鉄筋が破断して線路内に傾き、列車と衝突したとする調査結果を発表した。
事故は8月5日21時24分、東海道線の大船駅構内(神奈川県鎌倉市、東京駅起点47.243km)で発生。小田原発横浜行き臨時列車(E231系電車15両編成、列車番号9974E)が藤沢駅から大船駅に向かって走行中、線路脇にあった電柱と衝突した。乗客7人がけがしたと申告し、12人が体調不良を申告した。
JR東日本によると、電柱は根元から折れていたことが判明。何らかの要因で一時的に大きな荷重が電柱に加わり、根元部にひび割れが発生した。ひび割れは荷重がかからなくなれば閉じるが、折れた電柱は許容荷重の約8割の荷重が常にかかっている状態でひび割れが閉じず、ひび割れの部分に雨水が浸入した。
これにより内部の鉄筋が腐食しやすい状態になり、鉄筋10本のうち3本が破断。さらに1本の鉄筋の腐食も進んだ。この結果、電柱が折れて線路内に傾き、列車と衝突したという。
調査結果を受け、JR東日本はコンクリート柱の折損対策もあわせて発表した。同社管内のコンクリート柱のうち、一定方向に許容荷重の7割以上の荷重が常にかかっており、ひび割れが閉じない状態が継続する可能性のある単独コンクリート柱99本を「重点管理柱」に指定。今後2カ月程度で重点管理柱の補強を行う。
また、すべての重点管理柱を強度の高い構造物に建て替えるほか、今後は常時荷重が7割以上のコンクリート柱を新たに造らないようにする。目視検査の方法も見直し、霧吹器でアルコールや水をコンクリート柱の表面に噴霧することで、ひび割れを見やすい状態にする検査方法を導入する。カメラで撮影した画像を解析して自動でひび割れを検出する検査手法などの導入も検討するという。
この事故は運輸安全委員会(JTSB)も調査中。JR東日本はJTSBの調査結果を踏まえ、必要に応じて追加の対策を講じる考えだ。
この事故では東海道線や横須賀線、京浜東北線・根岸線で運転を見合わせ。駅間で列車が停止して乗客が長時間閉じこめられる事態になった。JR東日本は「長時間の駅間停車が見込まれる場合は、速やかに降車誘導の判断を行うとともに、列車に搭載している救済はしごの迅速な設置や、応援社員による駅間停車列車からの速やかな降車誘導開始ができるように継続して取組んでまいります」としている。
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