石狩~札幌「新たな軌道系交通」3ルート検討 ロープウェイ整備なら国内最長に



北海道石狩市が都市型ロープウェイなどでの整備を構想している「官民連携手法による新たな軌道系交通」について、同市が整備ルートとして3案を検討していることが分かった。民間事業者から整備・運営への参入の意向や意見、要望などを聞く「サウンディング型調査」を実施し、検討の深度化を図る。

ボリビアの首都ラパスに整備された都市型ロープウェイ。【画像:PsamatheM/wikimedia.org/CC BY-SA 4.0】

石狩市は11月22日、サウンディング型調査の実施要領と事業概要書を公表。「鉄道事業法または軌道法に定める軌道系交通施設の整備・運営に係る事業」を調査対象とし、検討中のルートとして「手稲ルート」「麻生ルート」「栄町ルート」の3案を示した。

いずれも石狩湾新港地区から石狩市役所などがある花川地区を経由し、札幌市の地下鉄駅やJR駅に連絡する。手稲ルートはJR函館本線の手稲駅周辺まで整備。麻生ルートは札幌市営地下鉄南北線の麻生駅周辺まで整備する。栄町ルートは札幌市営地下鉄東豊線の栄町駅や丘珠空港の周辺まで整備する。距離は3案とも約12~15km。

石狩市が構想する軌道系交通のルート案。【画像:国土地理院地図、加工:石狩市】

事業スキームは「官民連携手法」を検討しており、石狩市が整備してコンセッション事業として運営する手法や施設貸付による運営、民間資金を活用して整備する方式などを参考例として挙げている。事業スケジュールは想定案を示しており、まず2025~2026年度に整備・運営事業所の公募・選定を実施。2027~2032年度を設計・施工期間とし、2032年度に供用を開始するとしている。

サウンディング型調査では、まず民間事業者から意見・提案書を募集する。募集期間は12月7日まで。その後、必要に応じて12月下旬から来年2024年1月中旬まで個別対話を実施する。調査結果の概要は2月に発表する予定だ。

国土交通省は今年2023年4月、石狩市が提案した「官民連携手法による新たな軌道系交通の導入可能性調査」を支援対象の事業として採択し、調査を支援するための補助金(1394万円)の交付を決めた。

国土交通省はこの調査の採択に際し「全国初の小規模な地方公共団体での都市型ロープウェイ事業」と位置付け、「民設民営またはコンセッションを含めた官民連携事業導入を検討する点や、再生可能エネルギーの地産地消と連携した付帯事業を検討する点を先導的であり、他の地方公共団体への汎用性」を評価した。

一方、石狩市が今回公表した事業概要書では「費用、実装難易度、環境負荷、定時性、速達性等の観点から、適切な交通モードを検討中」としているが具体的な機種は盛り込んでおらず、ロープウェイ以外の機種を採用する可能性も残している。

国内最長の「ドラゴンドラ」。【画像:中山/写真AC】

仮にロープウェイで整備された場合、新潟県内の苗場スキー場~かぐらスキー場(田代エリア)を結ぶ「ドラゴンドラ」(約5km)を抜き、国内最長のロープウェイになるのは確実とみられる。世界最長のロープウェイは、南米ボリビアの事実上の首都ラパスとその周辺都市を結ぶ都市型ロープウェイのネットワーク「ミ・テレフェリコ」(合計約30km)とされている。

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