国土交通省は4月5日、本年度2023年度の官民連携の取組に対する支援対象の第1次分として合計25件を採択した。交通関係では北海道石狩市の「官民連携手法による新たな軌道系交通の導入可能性調査」などを「先導的官民連携支援事業」として採択した。

石狩市の調査は、石狩市域の再生可能エネルギーを活用して「都市型ロープウェイ」を導入することが可能がどうかを調べるもの。ロープウェイのルートを活用した再エネの送配電事業など付帯事業を実施する余地があるかどうかも検討する。
国土交通省は採択に際し「全国初の小規模な地方公共団体での都市型ロープウェイ事業として、民設民営またはコンセッションを含めた官民連携事業導入を検討する点」「再生可能エネルギーの地産地消と連携した付帯事業を検討する点」が先導的とし、ほかの地方公共公団対への適用も考えられる汎用性も評価。調査への支援として1394万円の補助金を交付する予定だ。
石狩市は札幌市の北郊で石狩湾に面した人口約5万8000人の市。港湾貨物取扱量が道内6位の石狩湾新港がある。戦前の1922年に函館本線の軽川駅(現在の手稲駅)と石狩町(現在の石狩市)を結ぶ馬車鉄道が開業したが、1937年の休止を経て1940年に廃止。その後、市内に鉄道が整備されたことはない。
戦後は札幌駅の隣にある函館本線・札沼線の桑園駅と石狩町を結ぶ鉄道が計画され、1956年に当時の石狩町長らが運営会社の石狩鉄道(のちの札幌臨港鉄道)を設立。翌1957年に地方鉄道免許を取得したが計画は1960年代に事実上中止され、1998年までに鉄道法規上も計画が廃止された。
一方で1972年に北海道開発庁が策定した石狩湾新港地域開発の基本計画に札幌~石狩を結ぶ高速軌道が盛り込まれ、1985年には石狩町がモノレール構想を発表。しかし建設費の見込みが1200億円と膨大な費用がかかることから具体化には至らなかった。
その後もモノレールのほか鉄道も含め複数の機種・ルート案が北海道や鉄道公団(現在の鉄道・運輸機構)などにより調査、検討されたが、いずれも建設費や採算性などがネックになり、構想は事実上凍結された状態になっていた。

急勾配の輸送に対応できるロープウェイは、山間部の観光地やスキー場などに導入されるケースが多い。一方で空中への架設が可能なことから、都市空間の有効活用策として導入されるケースもみられる。日本では横浜市内の桜木町駅前~運河パークを結ぶ約0.6kmの都市型ロープウェイ「YOKOHAMA AIR CABIN」(横浜エアキャビン)が2021年4月に開業した。
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