国鉄未成線「呼子線」活用の国道が開通へ 農道や食品貯蔵庫に転用された施設も



佐賀県の山口祥義知事は10月6日、国道204号唐房バイパスが11月12日に開通すると発表した。幻に終わった国鉄未成線「呼子線」の施設を活用する形で整備した。

呼子線・佐志~肥前相賀に残っていた路盤(2014年)。この部分と奥に見える唐房トンネルを含む1.9kmが唐房バイパスの整備に活用された。【撮影:草町義和】

唐房バイパスは、唐津市内の唐房地区と鳩川地区を結ぶ1.9kmのバイパス道。呼子線・佐志~肥前相賀の佐志寄りの路盤を活用した。住宅が密集していて道路幅が狭いエリアを避けるルートで、唐津中心部から東松浦半島北部の呼子方面へのアクセス改善を図る。

佐賀県は唐房バイパスを含む国道204号(呼子方面)の愛称として、道路沿いの海にちなんだ「ルート・グランブルー」を設定。サブタイトルを「~ジャック・マイヨールが愛した海~」とし、世界的に有名なダイバー、ジャック・マイヨールと唐津の海の関係性の深さを表現した。

唐房バイパスは2020年8月に着工。単線分の幅しかなかった呼子線の唐房トンネルや路盤を拡張する工事が進められ、翌2021年12月には唐房トンネルが貫通した。今年2023年3月末の開通を目指していたが、2022年12月に路盤脇の斜面の一部で亀裂や崩落が確認され、延期されていた。

唐房バイパスとしての工事に着手する前の呼子線・唐房トンネル(2014年)。【撮影:草町義和】

呼子線は筑肥線の虹ノ松原駅から東松浦半島を海沿いに周回し、筑肥線と松浦線(現在の松浦鉄道西九州線)が合流する伊万里駅に至る路線として計画された国鉄線。まず虹ノ松原~呼子を整備することが決まり、日本鉄道建設公団(鉄道公団、現在の鉄道・運輸機構)の手により1968年に着工した。

呼子線のルート。【作成:草町義和】
呼子線・西唐津~肥前相賀のルートと唐房バイパスの位置。【画像:国土地理院地形図、加工:草町義和】
呼子線・肥前相賀~呼子のルートと農道に転用された部分(緑)。【画像:国土地理院地形図、加工:草町義和】

このうち虹ノ松原~唐津~西唐津が筑肥線の一部として1983年に開業(唐津~西唐津は実質的には唐津線の改良)。西唐津~呼子も路盤はほぼ完成したが、虹ノ松原~西唐津に比べ利用者が少ないとみられたことから、国鉄の経営悪化を受けて1982年までに工事が凍結され、そのまま計画が消滅した。

しかし、国鉄の経営悪化を受けて西唐津~呼子の工事は凍結され、1982年までに中断。虹ノ松原~唐津~西唐津が筑肥線の一部として1983年に開業(唐津~西唐津は実質的には唐津線の改良)したが、西唐津~呼子の工事は再開されることなく計画が消滅した。

呼子線の屋形石~呼子(2014年)。単線幅のままアスファルトで舗装され農道に転用された。【撮影:草町義和】
呼子線の鳩川トンネル(2014年)。ハムやソーセージの貯蔵庫として使われた。【撮影:草町義和】

完成した施設は唐房バイパスのほか、屋形石~呼子の路盤を農道に転用。唐房バイパスの肥前相賀寄りにある鳩川トンネルはハム・ソーセージの貯蔵庫として活用された。

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