六甲ケーブル「阪神電鉄」に承継へ ケーブルカー上下分離は2例目



阪神電鉄と同社完全子会社の六甲山観光は12月8日、六甲山観光が運営するケーブルカー「六甲ケーブル線」(神戸市)に上下分離方式を導入し、阪神電鉄が施設を保有して六甲山観光が運行する体制に移行すると発表した。実施日は来年2024年4月1日の予定。六甲山観光の観光事業も分社化する。

上下分離方式が導入される六甲ケーブル。【画像:nekko_nekon/写真AC】

六甲山観光は六甲ケーブル線の事業資産を阪神電鉄に承継。六甲山観光が阪神電鉄に線路使用料などを払って六甲ケーブル線の施設を借り入れ、ケーブルカーを運行する。両社はこれに伴い、鉄道事業法に基づく許認可などについて、国土交通省に順次申請する予定だ。

六甲山観光は六甲ケーブル線の第1種鉄道事業(線路を保有して列車を運行する事業)の廃止を届け出るとともに、第2種鉄道事業(線路をほかの鉄道事業者から借り入れて列車を運行する事業)の許可を申請する。阪神電鉄は六甲ケーブル線の第3種鉄道事業(線路を保有してほかの鉄道事業者に貸し付ける事業)の許可と線路使用条件の認可などを申請する。

このほか、六甲山観光の観光事業も2024年4月1日に分社化。阪神電鉄が今年2023年4月に設立した設立した六甲山観光分割準備会社に観光事業を承継する。これにより現在の六甲山観光の事業は六甲ケーブルの運行などに特化される。

六甲ケーブル線は六甲山を登るケーブルカー。1923年、運営会社の六甲越有馬鉄道が設立され、のちに阪神電鉄の傘下に入って1932年に開業した。当初は通常の鉄道とケーブルカーの直通運行で神戸を有馬を結ぶ計画だったが実現しなかった。

六甲越有馬鉄道は戦後の1975年、摩耶ケーブル線を運営する摩耶鋼索鉄道を吸収合併して社名を六甲摩耶鉄道に改称。2000年には摩耶ケーブル線を神戸市都市整備公社に譲渡して再び六甲ケーブル線の単独運営に戻り、2013年、現在の社名に変更している。

各地のケーブルカーは利用者の減少に加え施設の老朽化も進んでおり、経営は厳しい。同じ関西のケーブルカーで能勢電鉄が運営していたケーブルカー「妙見の森ケーブル」は2023年12月3日限りで廃止された。阪神電鉄と六甲山観光は上下分離方式の導入により「六甲ケーブルにおける安全性の向上と事業継続性の確保を図り、六甲山の中長期的な発展及び活性化に一層取り組んでまいります」としている。

鉄道事業法に基づくケーブルカーで運行事業者と施設保有事業者が分離されるのは、2012年に北九州市が施設を引き継いだ皿倉山のケーブルカー(運行事業者は帆柱ケーブル、現在の皿倉登山鉄道)に次いで2例目。

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