JR東海は12月14日、リニア中央新幹線・品川~名古屋について、全国新幹線鉄道整備法に基づき「工事実施計画(その3)」と従来の工事実施計画の変更を国土交通大臣に認可申請した。静岡県内の工事に着手できていない現状を踏まえ、工事完了の予定時期を従来の「2027年」から「2027年以降」に変える。
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「その3」では、まだ認可を受けていなかった駅や車両基地の建築工事や設備工事、車両などを申請。これまでに認可を受けた項目についても、設計・検討・調査の深度化や協議・工事の進展などを踏まえ、工事予算や工事の完了予定時期などの変更も申請した。
工事予算は「工事実施計画(その2)」が認可された2018年時点から1兆5247億円増の7兆482億円に変更する。JR東海は2021年4月、難工事への対応や地震対策の充実、トンネルの掘削などで発生する土砂の活用先の確保などで工事費が7兆482億円に増加する見込みと発表。このときの見込み額を反映させた。
工事完了の予定時期は、南アルプストンネル静岡工区のトンネル掘削工事について「いまだ着手の見込みが立たない状況」とし、従来の「2027年」から「2027年以降」に変更する。
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全幹法に基づく工事実施計画は、路線名や区間、線路の位置、工事方法、工事予算、工事着手・完了の予定時期などを定めるもの。これらを認可後に変更する場合は変更の理由や内容を明らかにして認可を申請する必要がある。
リニア中央新幹線・品川~名古屋の工事実施計画はおもに土木関係の工事内容を定めた「その1」が2014年に認可されて着工。2018年にはおもに電気・通信関係の計画を定めた「その2」が認可されている。
一方、静岡県内を通り抜ける南アルプストンネルの建設について、静岡県の川勝平太知事が大井川の流量減少や自然環境への悪化を懸念して着工を認めておらず、調整が難航。2020年7月にはJR東海の金子慎社長(当時)が2027年の開業は難しいとの考えを示していたが、工事実施計画上の完了予定時期はこれまで変更していなかった。
今回の変更でも「2027年以降」とし、JR東海としては依然として2027年中の開業を諦めていないことを示したといえるが、実際に2027年中に開業するのはほぼ不可能な情勢だ。
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