埼玉高速鉄道線の延伸中間駅「廃線の散歩道」など意見 まちづくり有識者会議が発足



さいたま市の「地下鉄7号線中間駅まちづくり方針有識者会議」が設置され、第1回会合が7月8日に開かれた。地下鉄7号線(埼玉高速鉄道線)の先行延伸区間に整備する「中間駅」周辺のまちづくり方針策定に向け、議論を行う。

埼玉高速鉄道の列車(乗り入れ先の東急目黒線で撮影)。【撮影:草町義和】

第1回会合では委員から「(パーク&ライドの)駐車場が多いのもいいが、一方で駅前が駐車場だらけというのもどうなのか」「駅に行けば『たたずむ場所』があるといった空間作りが必要では」「(住宅と住宅以外の施設を混ぜた)用途混合をしてもいいのではないか」などの意見が出だ。

「武州鉄道にちなんだ散歩道を整備してはどうか」という意見も出た。武州鉄道は埼玉高速鉄道線の延伸想定ルートとほぼ同じルートで開業した私鉄。戦前の1938年までに全線廃止された。さいたま市の関係者によると、会議に先立ち委員による現地視察が行われ、その際に行われた沿線の歴史解説で武州鉄道の話が出たという。

有識者会議は都市工学の専門家など6人の委員で構成され、国土交通省の関東地方整備局と関東運輸局がオブザーバーとして参加する。第1回会合で埼玉大学の久保田尚教授が座長として選出された。

年度内にまちづくり方針を策定

埼玉高速鉄道線は赤羽岩淵~浦和美園の14.6kmを結ぶ第三セクター鉄道。東京メトロ南北線や東急目黒線との相互直通運転が行われている。浦和美園駅からJR宇都宮線・蓮田駅まで約14kmの延伸が構想されており、このうち浦和美園~岩槻の約7kmを先行して整備することが考えられている。

先行延伸区間の途中には埼玉スタジアム駅(臨時駅)と中間駅を設ける想定。このうち中間駅は目白大学さいたま岩槻キャンパス付近に整備。同駅周辺の45~65haを土地区画整理で市街化編入し、まちづくりを行うことが考えられている。

埼玉高速鉄道線の延伸区間(赤)。1938年までに全線廃止された武州鉄道(青)に並行するルートが考えられている。【画像:国土地理院地図、加工:鉄道プレスネット】

2016年に国土交通大臣の交通政策審議会が答申した『東京圏における今後の都市鉄道のあり方について』では「事業性に課題があるため~需要の創出に繋がる沿線開発や交流人口の増加に向けた取組等を着実に進めた上で、事業計画について十分な検討が行われることを期待」とし、事業化には沿線需要の創出が必要との考えを盛り込んでいた。

さいたま市は今年2022年3月、中間駅周辺地区まちづくり方針の素案を策定。「人と環境の新たな関係を創り出す先導都市『Wellness&Green City』」を将来像として掲げ、テレワークに対応した住環境の提供や脱炭素化を目指した交通システムの導入などを目指すとした。

有識者会議はこの素案をベースに導入機能や土地利用配置方針、基盤整備のイメージを議論。11月頃まで会合を4回開催して意見を取りまとめる。その後、さいたま市はパブリックコメントなどを行って本年度2022年度内にまちづくり方針を策定する考えだ。

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