リニア中央新幹線の三重県駅「一本化せず」候補地の亀山3案をJR東海に提案へ



三重県は11月1日、リニア中央新幹線の駅(三重県駅)の候補地3案について、3案を一本化せず提案する考えを示した。今年2022年内にJR東海などに要望する方針。

リニア中央新幹線に組み込まれる山梨リニア実験線。【画像:まーぴーちゃん/写真AC】

11月1日に開かれた三重県リニア推進本部の会議で同県が示した調査概要によると、3案はいずれも亀山市内で、関西本線の井田川駅を含む「エリアA」と東名阪自動車道の亀山インターチェンジを含む「エリアB」、紀勢本線の下庄駅を含む「エリアC」。開発の実現性、交通利便性、将来の発展可能性の観点から3案を比較検討した。

開発の実現性は「エリアA」「エリアB」で河川洪水浸水や液状化の危険性がある区域が含まれ、「エリアC」も土砂関係の災害の危険性がある区域が含まれる。しかし3案とも災害対策を講じることでリスク低減が可能とした。

交通利便性は三重県内の各地から120分以内で三重県駅にアクセスできる人口などを調査。公共交通でアクセスする場合、「エリアA」駅は137万4000人、「エリアB」駅は134万3000人、「エリアC」駅は135万2000人となった。最大差は3万1000人で大きな差はないとした。

公共交通で三重県駅にアクセスして東京(品川)方面に向かうケースでは、「エリアC」駅を選択する県民(58万6000人)が最多に。新大阪方面に向かうケースでは「エリアA」駅を選択する県民(141万5000人)が一番多いという結果になった。

将来の発展可能性については事業所の立地促進効果がどのくらいあるかを調査。第2次産業の事業所の立地は現状に比べ36.4~36.8%の増加で、第3次産業も7.80~7.86%増と3案に大きな差はなかった。

リニア中央新幹線の三重県駅の候補地とされた「エリアA」~「エリアC」の位置。亀山市の提案では各エリアとも半径5km圏として亀山駅も含んでいたが(白点線)、三重県は亀山駅を除外したエリア(青点線)を提案する。【画像:三重県】

三重県駅は昨年2021年、亀山市が候補地として三つの地域を提案。これを受けて三重県は2022年2月にリニア推進本部を設置して3案を比較検討した。当初は調査結果に基づき候補地を一本化してJR東海に提案する方針だったが、今回の調査結果を受け一本化せず3案を提案する。

三重県は一本化しない理由について「(3案に)それぞれ特色はあったが調査のなかでは差異が出なかった。また今後、JR東海がルートを想定して線形や勾配、カーブ、駅の構造など技術的な課題を示していくと思う。それを踏まえて駅位置を改めて考える必要がある」としている。

ただし亀山市の提案では各エリアの中心から半径5kmの範囲を候補地として亀山駅周辺も含んでいたが、三重県は各エリアの範囲を3分の1程度に絞り込んで亀山駅周辺を除外して提案する方針。同県は「それぞれのエリアの特色や優位性を生かせる部分を抽出するとともに、亀山駅周辺など住民生活に大きく影響が出てしまうようなエリアを除外した」としている。

今後は11月4日に開かれるリニア建設促進三重県期成同盟会の総会で候補地3案が決議される見込み。三重県は年内にJR東海や国に要望する方針だ。

※追記(2022年11月2日18時53分):配信当初、年表記に誤記があり修正しました。

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