熊本県の蒲島郁夫知事は11月30日、熊本空港アクセス鉄道のルートを再検討する考えを明らかにした。台湾の半導体メーカーの熊本進出が決まったのを受け、現行ルート以外の案も含め改めて検討する。
ソニーグループが11月9月、世界大手の半導体メーカー台湾積体電路製造(TSMC)と合弁会社を設立することを発表。熊本県菊陽町のセミコンテクノパークにあるソニーグループ工場の隣接地に半導体生産の新工場を建設する。来年2022年に着工する予定で、2024年末までに生産を開始することを目指す。これにより約1500人の雇用が創出されるという。
蒲島知事はこれを受け、熊本県議会本会議で空港アクセス鉄道のルートの再検討を表明。「(TSMCの)立地決定を踏まえ、豊肥本線の輸送力増強によるセミコンテクノパークへのアクセス向上、さらには県内全域の交通ネットワークの利便性向上につながるよう、現在の三里木ルートのみならず、より効率的で効果の高いルートについて、スピード感を持って検討していく」と述べた。
熊本県はこれまで、豊肥本線の三里木・原水・肥後大津の各駅から分岐して熊本空港に向かう3案のうち、三里木からの分岐ルート案を軸に検討を進めてきた。この案では三里木駅周辺と空港手前の丘陵部をトンネルで整備し、熊本県民総合運動公園付近に中間を設置するものとしている。
しかし昨年度2020年度の調査結果では、1日の利用者数の見込みが前回2019年度の調査より2500人減って5000人に。黒字転換時期も前回調査が開業後2年だったのに対し33年と大幅に延びた。このため熊本県は新工場の整備による移動需要も取り込めるよう、ルートの再検討を決めた模様だ。
新工場の予定地に一番近い豊肥本線の駅は原水駅で、同駅からの分岐案を軸に再検討されるとみられる。しかし熊本空港が豊肥本線の南側にあるのに対し、新工場は反対側の北側にある。原水駅から新工場までは直線で約2kmあり、同駅と新工場を結ぶ二次交通の整備などが不可欠。空港アクセス鉄道の整備効果を高められるかどうかは不透明だ。
《関連記事》
・熊本空港アクセス鉄道の黒字転換「2年→33年」に 熊本県、2020年度の調査結果を公表
・豊肥本線・三里木~原水「新駅」どこまで進んだ? 構想20年、状況変化で動き出すか
・東武竹ノ塚駅「高架化」ホームドア設置工事が延期に 一部の部品「世界的に不足」影響