京成電鉄の押上線で「踏切ゼロ」に向けた高架化工事が進んでいる。荒川橋りょうを除く部分のうち、墨田区内の押上~八広間は2015年までに高架化が完了。葛飾区内の四ツ木~青砥間も用地買収が完了し、高架橋に切り替えるまで使用する仮設線路(仮線)の工事が始まった。
線路の脇に仮線用の敷地
青砥駅から押上方面に向かう列車に乗って、工事状況を見てみた。青砥駅はすでに高架化されており、ここから下り勾配で押上方面へ進んでいく。まもなく京成立石駅に到着というところで線路は地上に入り、進行方向の右側(北西側)に仮線を敷くための用地が姿を現す。鉄板を使って単線分の幅の路盤を構築しているのが見えた。
既存の線路を高架化する場合、そのほとんどは「仮線工法」と呼ばれる方法で高架化する。四ツ木~青砥間も仮線工法による高架化だ。この工法では、まず地上に敷かれた線路の脇に仮線を敷設。仮線への切替後、従来の線路を撤去して高架橋を建設する。これにより線路の高架化を図ったのち、仮線を撤去。跡地には道路などを整備するのが一般的だ。
京成立石駅付近も北西側に仮線や仮設ホームを設けるための用地の買収が進んでいるが、2軒だけ仮線・仮設ホームの敷地内に入り込んだ建物があり、このうち1軒はパチンコ店として営業していた。
京成立石駅付近は仮線の用地確保後、同駅の下り線ホームを拡張するようにして少しずらして仮設の島式ホームを構築。その後、橋上駅舎を撤去して高架橋の工事に入ることになる。
京成立石駅から先も、北西側に仮線の建設用地が続く。7年前にここを訪ねたときは、用地こそ整地されていたものの、工事は行われていなかった。いまは地面に鉄板が埋め込まれ、工事関係者の詰め所も設置されているなど、工事が本格化している様子が見て取れる。
平和橋通りの踏切を過ぎると、京成押上線と仮線用地は緩やかな上り勾配に。荒川の手前に設けられた四ツ木駅が、川をまたぐため高い位置に設けられているためだ。四ツ木駅に近づいてくると、仮線用地は線路の敷設が完了。路盤は仮設のスロープ高架橋に変わり、四ツ木駅に取り付いていた。
用地買収の難航で10年延長、さらに5年延長か
四ツ木~青砥間の高架化は、踏切を解消して道路交通の改善などを図る連続立体交差事業(連立事業)として計画され、2001年1月に都市計画が決定。2003年2月に事業認可を受け、用地買収に着手した。同区間の2.6kmのうち約2.2kmを高架化し、平和橋通りなど合計11カ所の踏切を解消する。
当初の事業施行期限は2012年度末(2013年3月31日)だったが、用地買収が難航。期限を迎える直前の2013年1月25日、事業施行期限を10年延長して2022年度末(2023年3月31日)に変更することが認可された。
葛飾区の交通・都市施設担当部長が今年2020年2月の区議会で答弁したところによると、用地買収は2018年までに完了し、仮線の工事も一部で進んでいる。しかし、京成立石駅前の部分は駅前の立地を生かして営業する店舗が多かったこともあり、移転先の選定や生活再建の検討に時間がかかった。移転先の建築工事が完了しないと、移転できない権利者もいるという。
こうしたことから交通・都市施設担当部長は、2022年度までに工事を完了させるのは難しい状況とし、おおむね5年程度の延伸が必要との認識を示している。この場合、事業施行期限は7年半後の2027年度末(2028年3月31日)に変更されるとみられる。
事業期間には高架化後の仮線撤去や仮線跡地の整備も含まれるため、高架化と踏切の解消そのものは事業期限より早く実現するとみられるが、それでも踏切がなくなるまで、少なくともあと6年程度はかかりそうだ。
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