奥羽本線・蔵王~山形「新駅」山形市とJR東日本が協議 かつて私鉄新線の計画も



新駅が構想されている奥羽本線の蔵王~山形間(黒)。終戦直後には奥羽本線に並行する蔵王高速電鉄(赤)の計画もあり、途中駅が複数設けられることになっていた。【画像:国土地理院地図、加工:草町義和・鉄道プレスネット編集部】

山形市は9月15日、奥羽本線(山形新幹線・山形線)の蔵王~山形間に設けることが考えられている新駅の構想について、JR東日本と協議を開始したことを明らかにした。

市議会9月定例会の一般質問で、企画調整部の畑口和久部長は「JR東日本とは、昨年度(2020年度)の山形市地域公共交通計画の策定にあたり、山形市が新駅の設置を検討することを計画書に記載するということについて、ご理解をいただいている」とし、本年度2021年度からはJR東日本との協議を開始。今後は「利用者見込み数や整備運営にかかるコスト、周辺のまちづくり施策などさまざまな視点から、設置の必要性や整備効果などについて検討を進める」とした。

このほか、佐藤孝弘市長は「新駅の設置では今後の道路整備計画も含め将来のまちづくりや土地利用などさまざまな視点からの検討をJR東日本より求められている。国などと連携しながら新駅の検討を進めたい」と話した。

新駅の構想は今年2021年3月に策定された山形市地域公共交通計画(計画期間:2021~2025年度)で初めて盛り込まれた。「市街地南部における主要な交通結節点」と位置付けており、路線バスや新たに導入する南部循環バス「南くるりん」(仮称)などとの連絡を想定。新駅と「南くるりん」を組み合わせることで、山形大学医学部周辺や東北芸術工科大学、吉原地区との連絡を図る。

新駅の具体的な位置や事業費の概算などは示されていない。地域公共交通計画では「路線バス事業者やタクシー事業者とも協議しながら検討する」「検討の結果に応じて、具体的な整備方針の策定、設計、整備へと進めていく」としている。

山形大学医学部の近くに残る蔵王高速電鉄の橋台(右下)。レールが側溝をまたげるようコンクリートの構造物が構築された。【撮影:草町義和】

山形新幹線・山形線の山形駅から南方向へは、隣の蔵王駅までの営業距離が5.3kmと長い。終戦直後には山形駅と現在のかみのやま温泉駅を結ぶ私鉄「蔵王高速電鉄」が計画され、途中8駅が設けられる計画だった。1949年に着工したが、朝鮮戦争による物価高騰の影響で工事は中止され、幻に終わった。

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