羽越新幹線・奥羽新幹線「工夫すれば整備効果あり」沿線6県が調査結果を公表



山形県内の日本海側南部(羽越本線の小岩川~あつみ温泉付近)を走る羽越新幹線のイメージ。【撮影:草町義和、加工:鉄道プレスネット編集部】

羽越新幹線・奥羽新幹線の各建設促進同盟会は6月21日、青森・秋田・山形・福島・新潟・富山の6県で構成されるプロジェクトチーム(PT)がまとめた羽越新幹線・奥羽新幹線の事業費や費用便益比(B/C)などの調査結果を発表した。6県が両新幹線の本格的な調査を行ったのは、これが初めて。単線で整備してコスト削減を図るなどの工夫を行えば整備効果があるとした。

この調査では「羽越新幹線のみを整備する場合」「奥羽新幹線のみを整備する場合」「羽越新幹線・奥羽新幹線を同時に整備する場合」の3ケースについて検討。整備方式は複線・高架構造と単線・盛り土構造の2ケースを想定した。

着工は2030年、開業は2045年を想定。運行計画は1日につき片道32本(毎時2本程度)とし、速度は東北新幹線で実現した最高速度320km/hに基づいて設定した「速度向上パターン」と、すでに開業している新幹線の表定速度から算出した「既存パターン」の二つを想定した。

羽越新幹線は富山~新青森間の656.3km。富山~上越妙高間(北陸新幹線)と長岡~新潟間(上越新幹線)の計170.2kmは既設の新幹線を共用し、上越妙高~長岡間と新潟~新青森間の計486.1kmを新設するものと想定した。新設区間では新潟県内に柏崎・新発田・村上の3駅、山形県内に鶴岡・酒田の2駅、秋田県内に羽後本荘・秋田・東能代・鷹ノ巣・大館の5駅、青森県内に弘前駅を新設するものとした。

所要時間(速度向上パターン)は富山~新青森間で、現在の北陸新幹線・東北新幹線(大宮経由)より1時間26分短い3時間2分。鶴岡~東京間(新潟経由)はいまより1時間12分短い2時間21分とした。山形県と秋田県をまたぐ1日あたりの断面交通量は1万5000人。事業費は複線・高架構造で3兆4400億円、単線・盛り土構造で2兆6000億~2兆7100億円と試算した。

奥羽新幹線は福島~秋田間の265.6km。ほかに東北新幹線・福島駅部の既存施設0.7kmを使うものとした。山形県内に米沢・赤湯・山形・さくらんぼ東根・新庄の5駅、秋田県内に湯沢・横手・大曲・秋田(羽越新幹線と共用)の4駅を新設する想定だ。

所要時間(速度向上パターン)は秋田~東京間がいまより1時間14分短縮されて2時間23分に。山形~東京間では46分短縮の1時間40分とした。2045年時点の需要予測は、山形県~福島県の断面交通量を1日あたり32万7000人とし、いまより3倍近く増えるとした。事業費の試算は複線・高架構造が1兆9100億円、単線・盛り土構造が1兆4500億~1兆5100億円。

調査で想定された羽越新幹線・奥羽新幹線のルート。【画像:羽越新幹線建設促進同盟会・奥羽新幹線建設促進同盟会・関係6県合同プロジェクトチーム】

B/Cは複線・高架構造での整備や速度向上を行わない既存パターンなどのケースによる最小値で、羽越新幹線が0.53、奥羽新幹線が0.50、羽越・奥羽の同時整備で0.47。いずれも1を下回った。

一方、単線・盛り土構造で建設するなどコスト削減を行い、さらに最高速度320km/hの速度向上などを見込んだケースによる最大値は1を上回った。羽越新幹線は1.21で、奥羽新幹線が1.13。羽越・奥羽の同時整備でも1.08となった。B/Cは所要時間の短縮や利用者の増加などによる経済効果を整備コストで割った指標で、B/Cが1を上回れば事業費を超える経済効果があるとされる。

羽越新幹線と奥羽新幹線は1973年、全国新幹線鉄道整備法に基づき基本計画が決定された新幹線。同じ年に整備計画が決定した「整備新幹線」の整備が進んだこともあり、近年は基本計画線の実現に向けた動きが各地で活発化している。羽越新幹線・北陸新幹線の沿線6県は2017年度から調査を行っていた。

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