JR東海は11月16日、「水素動力車両」の開発に向け11月から模擬走行試験を実施すると発表した。すでに発表していた燃料電池の活用に加え、水素エンジンの活用についても開発を進める。
模擬走行試験はJR東海の小牧研究施設(愛知県小牧市)にある車両走行試験装置を使用。この装置はレールを模した軌条輪の上で台車を走らせ、勾配など実際の走行条件をシミュレートできる。
この試験では、水素を燃料とする燃料電池が供給する電気か、水素エンジンで発電した電気を使用。蓄電地内蔵の車両制御装置を介して車両走行試験装置上の台車に装備したモーターに電気を供給し、台車を走らせる。燃料電池と水素エンジンは出力やエネルギーなどの特性が異なるため、模擬走行試験などで走行性能や、山間部が多く長距離となるJR東海の非電化路線への適合可能性などを検証する。
まず11月から燃料電池による模擬走行試験を実施。来年度2024年度以降に水素エンジンによる模擬走行試験を行う計画だ。
JR東海によると、同社が目指す水素動力車両は燃料電池か水素エンジンが供給、発電する電気に加え、蓄電池の電気も併用する「水素動力ハイブリッドシステム」を採用。これにより走行時の二酸化炭素(CO2)排出量をほぼゼロに抑えることが可能になるという。同社は非電化路線への導入に向け、山間部の連続する勾配を走れる高い出力と、長距離走行が可能な高い効率性を備えたシステムの実現を目指すとしている。
JR東海は非電化の高山本線や紀勢本線に、ディーゼルエンジンと蓄電地を組み合わせたハイブリッドシステムのHC85系特急型気動車を導入。ディーゼル車両から排出されるCO2を実質ゼロにする技術開発の一環として次世代バイオディーゼル燃料の試験も行っているが、水素を燃料にした水素動力車両の開発も目指している。
3月に発表した本年度2023年度の重点施策と関連設備投資で、車両走行試験装置を用いた燃料電池車の試験を盛り込んでいたが、今回の発表では燃料電池に加え水素エンジンの活用も検討していることを明らかにした。同社によると、鉄道での水素エンジンの活用は国内外で事例がないという。
車両の開発はJR東海と日本車両が共同で実施。水素動力ハイブリッドシステム用の制御装置は東芝インフラシステムズと開発している。燃料電池はトヨタ自動車製の燃料電池モジュールを使用。鉄道車両用の水素エンジンは開発メーカー「i Labo」と開発していく。将来の水素供給体制はENEOSと検討を始める。
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