JR北海道「ワンマン電車の導入」「ICカード拡大の検討」など 2022年度事業計画



JR北海道は4月1日、2022年度事業計画を策定し、国土交通大臣の認可を受けたと発表した。ワンマン運転に対応した電車の導入や交通系ICカードのエリア拡大の検討などを行う。認可は3月31日付け。

JR北海道のH100形。【画像:中村昌寛/写真AC】

鉄道施設の整備計画では、老朽化した施設の更新を推進。車両は「2両編成のワンマン電車」の導入を新たに盛り込み、地方電化区間での列車運行の省力化・省人化を進めるとした。このほか、普通列車用の気動車H100形の増備を引き続き進め、老朽化したキハ40系の更新を推進。特急型気動車キハ261系の増備も行う。特急電車789系や通勤気動車201系は重要な機器類を取り換える。SL客車のリニューアルも引き続き実施する。

同社が単独では維持することが困難としている路線のうち、留萌本線・深川~留萌間と根室本線・富良野~新得間は「早期の鉄道事業廃止及びバス転換を目指す」と明記。「鉄道を持続的に維持する仕組みの構築が必要な線区」については「地域交通を持続的に維持する仕組み等の構築について主体的に関係者との協議・検討を進める」としたが、具体案などは盛り込まなかった。

2021年度冬季は2月6日と2月21日からの記録的な大雪の影響で、札幌駅を発着するすべての列車が長期間運休するなど、雪害による大規模な輸送障害が発生した。2022年度事業計画では、再発防止に向け早めの運転規制や計画運休などの改善策に取り組むほか、ポイントヒータ―や除雪機械の増強などの設備強化も盛り込んだ。災害が発生した場合の地域連携の在り方についても見直しを進め、北海道による雪害対策対応チームに参加する。

2031年春の開業が予定されている北海道新幹線の新函館北斗~札幌間は、札幌駅の工事のほか倶知安駅と長万部駅で支障物の移転工事などを進める。最高速度を320km/hに引き上げるための工事は、建設主体である鉄道・運輸機構と連携して推進する。既開業区間の新青森~新函館北斗間のうち在来線との共用区間(青函トンネル)は営業最高速度260km/hの実施を目指し、実施可能な方策を関係者との検討・協議を進める。

営業面では快速「エアポート」の指定席「uシート」のチケットレス商品の設定や、観光列車「花たび そうや」「THE ROYAL EXPRESS」「HOKKAIDO LOVE!ひとめぐり号」の運行を実施する。また、交通系ICカード「Kitaca」のエリア拡大の検討なども行い、キャッシュレス化を推進する。

観光列車の「THE ROYAL EXPRESS」。【画像:東急・JR北海道】

2022年度の鉄道施設整備計画は次の通り。

■輸送設備の維持更新

●老朽設備取替
・電気設備や排雪モータカーロータリーなどの線路保守用機械の取替
・駅舎や旅客上家、運転所などの鉄道事業建物の改修
・運行管理システムの取替

●保安・防災対策
・ポイントヒーターや除雪機械などの増強
・落石防護設備や土砂止設備などの線路防災設備の整備
・電気ケーブルのコルゲート化
・高架橋などの耐震化
・踏切事故防止のための保安設備の整備

●安定輸送対策
・橋マクラギ合成化や重軌条化、ロングレール化などの軌道強化対策の推進
・配電線路の改修

■経営の体質改善

●業務運営方式の改善や技術開発など
・駅のバリアフリー化
・オペレーター支援型自動券売機「話せる券売機」の設置拡大
・交通系ICカード「Kitaca」エリアの拡大
・次期運輸業務システムの構築

●輸送力整備
・「北海道ボールパークFビレッジ」開業に向けた北広島駅の改修
・札幌駅南北乗換こ線橋の新設

●車両
・ワンマン電車の新製
・H100形気動車の新製
・261系特急気動車の新製
・電車や気動車の重要機器の取替

2022年度は鉄道事業の営業収益を675億円、営業費を1343億円とし、668億円の赤字を見込む。全事業の営業損益は653億円の損失。当期純損益は225億円の損失で、赤字見通しは7期連続となる。

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