近畿車両「第三軌条」「架線」直通列車向けの特許を出願 近鉄の構想を視野に開発か



第三軌条方式と架空電車線方式の両方に対応した英国のクラス365形電車。【撮影:草町義和】

集電方式の異なる電気鉄道を直通運転するための技術の特許を、近畿車両が出願していたことが分かった。出願は昨年2020年1月29日付け。大阪港トランスポートシステム(OTS)北港テクポート線の夢洲駅(仮称、大阪市此花区)と近鉄線を直通する列車の構想を視野に入れたものとみられる。

今年2021年8月10日の特許公報によると、近畿車両が出願したのは「第三軌条用集電装置を架線集電方式の車両限界に納める」もの。第三軌条方式の鉄道車両の台車に設置する集電装置(集電靴=コレクターシュー)を回転させ、車体側に移動させるようにする。

これにより架空電車線方式の鉄道の車両限界(車両の最大寸法の範囲)にも集電靴が収まるようにし、第三軌条方式と架空電車線方式の鉄道路線を直通運転できるようにする。

電気鉄道の多くは線路上方の電線(架線)から車両に電気を供給する架空電車線方式だが、一部の地下鉄を中心に第三軌条方式という集電方式もある。この方式では、2本のレールの脇に設置したレール(第三軌条)に電気を流し、集電靴を第三軌条に接触させることで車両に電気を供給する。

近鉄グループホールディングスは2019年5月に策定した中期経営計画で、「万博・IR会場となる夢洲と近鉄線を結ぶ直通列車による沿線へのアクセス網の整備」を盛り込んだ。今年2021年5月に策定された中期経営計画でも「夢洲と沿線観光地を直通で結ぶ列車の運行を継続検討」としている。

直通列車の構想ルートは夢洲~(北港テクノポート線)~コスモスクエア~(大阪メトロ中央線)~長田~(近鉄けいはんな線)~生駒~(近鉄奈良線)~近鉄奈良方面。このうち北港テクノポート線は夢洲~コスモスクエア間のみ2025年日本国際博覧会(大阪万博)開催前に開業の予定。夢洲には大阪万博の会場が設けられるほか、統合型リゾート(IR)の整備構想もある。

各線の集電方式は北港テクノポート線・中央線・けいはんな線が第三軌条方式だが、生駒以遠の近鉄線は架空電車線方式を採用しており、直通運転には両方の集電方式に対応した車両の開発が必要になる。

直通列車の運行が想定される区間(太線)。夢洲~生駒間は第三軌条方式、生駒以東は架空電車線方式になる。【画像:国土地理院地図、加工:鉄道プレスネット編集部】

海外では英国などで第三軌条方式・架空電車線方式の両方に対応した車両が運用されている。日本では信越本線・横川~軽井沢間(群馬県・長野県、1997年廃止)で第三軌条と架空電車線(駅構内)を併用し、両方式に対応した電気機関車が運用されていたが、1963年までに架空電車線の新線に切り替えられた。

近鉄が構想する直通列車は大阪万博の開催には間に合わない見込みで、IRの整備をめどに導入が検討されるとみられる。

《関連記事》
北港テクノポート線の南ルート「鉄道運行者」来年度にも鉄道事業許可を申請へ
近鉄「新たな観光特急」運行へ 中計明記、夢洲直通は検討継続、フリーゲージ触れず