新・青春18きっぷで「東京→九州」普通列車で移動 リニューアルよりきつかったこと



2年前の2023年9月、普通列車を乗り継いで東京から北海道まで2日間かけて移動した。使用した切符は「青春18きっぷ」。春・夏・冬の指定された期間中に限りJR全線の普通列車が乗り放題という、格安切符の定番だ。

この「青春18きっぷ」が2024年冬季版からリニューアルされた。従来は指定期間中の任意の5日分が乗り放題だったが、リニューアル後は連続する3日間利用できるタイプと連続する5日間利用できるタイプの2種類に変更。期間中に日をあけて「飛び飛び」に利用するといったことができなくなり、使い勝手は悪くなった。

ただ、東京→北海道のときのように連続的に利用するだけなら、使い勝手は従来の「青春18きっぷ」とたいした差はない。今回は「新・青春18きっぷ」の3日間用を使用し、東京から普通列車を乗り継いで九州を訪ねることにした。

リニューアルされた「青春18きっぷ」。【撮影:草町義和】

1本目:東京→根府川

列車番号:1835E
距離:90.4km
時刻:東京8時09分→根府川9時38分(1時間29分)

2025年8月23日の朝、まずは東京駅の丸の内側に出て赤レンガの駅舎を拝む。東京駅から「旅」を始めるときは、赤レンガを拝まないといけないという気分が何となくある。

東京駅の丸の内駅舎。【撮影:草町義和】

丸の内南口の自動券売機で3日間用の「青春18きっぷ」を購入。リニューアル前に比べ小さくなり、財布などに入れやすい。改札口で自動改札機に投入すると、反対側の取出口からすぐに出てくる。改札の通過を証明する穴があけられていた。

今回の「青春18きっぷ」のリニューアルでは自動改札機を使えるようになり、改札時の手間が少し省けるようになった。ただ、駅員に改札スタンプを押してもらうことで「旅が始まる」という気分があったので、これはこれで味気ないという気持ちもある。

続いて改札内の駅弁販売店で朝食の「チキン弁当」を購入。発売開始から60年以上が過ぎた、東京駅では定番の駅弁だ。

東京駅の定番駅弁「チキン弁当」。【撮影:草町義和】

階段で東海道線下りの9・10番線ホームに上がる。目の前には東北新幹線のホームが見え、仙台駅からやってきた「はやぶさ2号」のE5系電車が入線。しばらくすると、10番線には本日1本目となるE231系電車の熱海行き普通列車、列車番号1835Eが入線した。

東京駅始発の列車ではなく、高崎線の籠原駅からやってきた上野東京ラインの直通列車。ここまで乗ってきた客がすべて東京駅で降りるわけではないから、着席できる可能性は低くなる。朝食を取る以上、できれば飲料類を置けるスペースがあるボックスシートの窓側席に座りたかったが確保できず、ドア脇のロングシートに腰を落ち着けた。

1本目は高崎線からやって来た普通列車。【撮影:草町義和】

1835Eは8時09分、定刻で東京駅を発車。しばらくは見慣れたビル群が窓外に見え、東京都から神奈川県へと移っていく。しかし景色のことを考える余裕はなく、ボックスシートの窓側席がいつ空くか(朝食をいつ取れるか)、そればかり気になって仕方ない。

9時を過ぎて小田原駅を発車しても、ボックスシート窓側席を確保できるめどは立たなかった。窓外には相模湾が見えるようになる。車内での朝食は諦め、根府川駅で下車した。

小田原を過ぎると相模湾が見えてきた。【撮影:草町義和】

2本目:根府川→熱海

列車番号:1839E
距離:14.2km
時刻:根府川10時13分→熱海10時29分(16分)

青い海と青い空が広がる根府川駅。【撮影:草町義和】

根府川駅での下車は考えていなかったが、そもそも今回は姫路か岡山あたりで1泊することを決めていただけ。細かな予定は立てていない。

前回の北海道行きでは東北・北海道エリアの列車本数が少なかったこともあり、事前に詳細な乗り継ぎプランを作成した。一方で東海道・山陽本線の普通列車は運行本数がかなり多い。最も本数が少ない区間でも日中は1時間間隔だ。それに東京駅を8時台に出て普通列車を乗り継ぐ場合、岡山駅は最速で20時台の到着。姫路駅なら18時台だから、時間的にも余裕がある。

青い海と青い空。典型的な夏の景色が見える。跨線橋を上がって改札口にたどりつくと、駅員のいない無人駅のはずなのに老齢の男性が立っており、下車客に「ここにタッチしてください」とICカードの簡易改札機を指さして案内していた。私の場合は磁気券の「青春18きっぷ」だから、男性に切符を示して通過。レトロな木造平屋の駅舎内にあるベンチに腰を落ち着けてチキン弁当の封を開いた。

レトロな木造駅舎の根府川駅。【撮影:草町義和】
根府川駅の待合室でチキン弁当をひろげる。【撮影:草町義和】

熱海行きの普通列車1839Eに乗車。今度はE233系電車だった。こちらも座席がほぼ埋まる程度。次の乗り換えまでそんなに時間がかからないからと、運転台後方に立って前面の景色を見て過ごす。しばらくすると、EF210形電気機関車が牽引する貨物列車とすれ違った。

E233系の普通列車で熱海へ。【撮影:草町義和】
EF210形が牽引する貨物列車とすれ違う。【撮影:草町義和】

3本目:熱海→焼津

列車番号:439M
距離:89.1km
時刻:熱海10時32分→焼津12時01分(1時間29分)

1839Eは静岡県に入って10時29分、熱海駅2番線に滑り込む。脇の3番線では浜松行き普通列車439Mが3分後の発車を待っていた。ここで東海道本線の運営会社がJR東日本からJR東海に変わり、439MもJR東海の315系電車。3年前にデビューしたばかりの新型だ。

熱海からはJR東海の新型315系。【撮影:草町義和】

1839Eを降りて439Mのドアに流れる客が思っていた以上に多い。しかも1839Eが10両編成(15両だったかもしれない)なのに対し439Mは4両編成。私がゆっくり439Mの車内に入ったころは満席で、立席スペースも地方都市圏の平日朝ラッシュ時並みに混雑していた。

熱海駅を発車し、丹那トンネルを過ぎて10時44分着の三島駅で大量下車。続いて10時50分着の沼津駅でも多数の下車があり、座席にありつけた。ただオールロングシートで車窓は楽しみにくい。富士山は積雲に覆われて頂上は見えなかった。

富士山は雲に覆われて見えなかった。【撮影:草町義和】

このまま終点の浜松駅まで乗るつもりだったが、焼津駅に到着してドアが開いた瞬間、「焼津といえば漁港」と連想。昼食は刺身を食べたいという気分になり、あわてて列車を降りた。

4本目:焼津→浜松

列車番号:445M
距離:63.4km
時刻:焼津13時05分→浜松14時04分(59分)

「発作的」に下車した焼津駅。【撮影:草町義和】

「発作的」に降りてしまったため、目当ての食堂などがあったわけでない。とりあえず炎天下のなか漁港まで歩き、停泊中の漁船を眺める。漁港の近くにあった食堂ののれんをくぐると混雑していたが、一番安い刺身定食でも新鮮でうまかった。安いといっても1500円だったが。

焼津の漁港。【撮影:草町義和】
漁港近くの食堂で食べた刺身定食。【撮影:草町義和】

再び炎天下のなかを歩いて焼津駅に戻り、13時05分発の浜松行き普通列車445Mに乗車。313系電車で座席は転換クロスシートだ。ただ座席は満席で立客もやや多い。座れなければロングもクロスも関係なく、再び運転台後方に陣取って前面展望をしばらく楽しむ。静岡の茶畑や広大な天竜川も見えた。

焼津駅からは転換クロスシートの313系。【撮影:草町義和】
茶畑が広がる静岡の車窓。【撮影:草町義和】

5本目:浜松→豊橋

列車番号:971M
距離:36.5km
時刻:浜松14時27分→豊橋15時01分(34分)

445Mは14時04分、浜松駅に到着。ちょっと駅の外に出てみたが、とくに何かすることもなく、すぐにホームに戻って豊橋行き普通列車971Mに乗り込む。再び315系のロングシートだが、座席は1割埋まる程度だった。

浜松→豊橋は再びロングシートの315系だった。【撮影:草町義和】

浜松から3駅先の弁天島駅あたりで窓外に浜名湖が見えたが、不覚にも写真を撮り忘れてしまう。炎天下の焼津を歩いたことで疲労がたまっていたのか、ちょっと頭が回らなくなっていた。

6本目:豊橋→柏原

列車番号:快速5515F
距離:173.8km
時刻:豊橋15時02分→柏原16時54分(1時間52分)

愛知県に入って豊橋駅には15時01分着。隣に停車していた米原行き快速5515Fに乗り換える。転換クロスシートの313系で今度は座れた。

所定ダイヤなら1分接続の米原行き快速。転換クロスの313系で今度は座れた。【撮影:草町義和】

1分接続の15時02分発だが、実際は1分ほど遅れて発車。このときは気に留めていなかったが、岡崎駅あたりから4~5分ほどの遅れで走るようになった。車内放送の案内によると、尾張一宮駅の先にある踏切でトラブルがあったらしい。

車内は少しずつ客が増え、刈谷駅を発車したころには席が半分ほど埋まった。いつしか東海道新幹線の線路が並行するようになり、5515Fの脇をN700Sが勢いよく通過していく。名古屋からアレに乗れば3時間ほどで九州に到達できるはずだが、こちらはいつになるのかと思う。

脇を通り過ぎていく東海道新幹線のN700S。【撮影:草町義和】

尾張一宮駅を発車すると遅れは拡大し、岐阜駅や大垣駅では9分遅れに。快速5515Fは夕暮れの日に照らされて伊吹山地へと向かっていく、岐阜・滋賀県境を越えて17時01分ごろ、列車は7分遅れで柏原駅に滑り込んだ。

7本目:柏原→米原

列車番号:快速5517F
距離:15.0km
時刻:柏原17時24分→米原17時39分(15分)

東海道本線では最も利用者が少ないといわれている柏原駅。【撮影:草町義和】

柏原駅は東海道本線の駅としては利用者が最も少ない駅らしいということで、どんな駅なのか見てやろうと下車した。簡易委託駅とのことだったが、跨線橋を渡って駅舎に向かうと、ちょうど委託職員らしき男性が切符売場のシャッターを降ろしていた。シャッターに書き込まれた営業時間は五つに分かれており、最後の営業時間は17時05分までとなっていた。

柏原駅の駅舎。【撮影:草町義和】
柏原駅は簡易委託駅だが切符売場は到着直後に閉まった。【撮影:草町義和】

駅の周囲は意外と住宅が多く、利用者が一番少ない駅とは思えない。JR東海の資料によると、柏原駅の利用者数(1日平均の乗車人員)は2023年度で212人。乗降人員なら1日400人を超えるだろう。東海道本線という「大幹線」の駅としては少なくても、山間部の小駅にしては多いほうだ。

20分ほどしてやってきた米原行き快速列車5517Fも転換クロスシートの313系。遅れは1分程度に縮小していた。夕焼けに照らし出された伊吹山を見ながら、列車は定刻17時39分、米原駅に到着。ここでJR東海のエリアからJR西日本に移る。

柏原駅にやってきた快速5517F。【撮影:草町義和】
米原駅でJR東海からJR西日本のエリアに移る。【撮影:草町義和】

米原駅から少し離れたところに鉄道総研の風洞技術センターがあり、ここでは過去に使用された新幹線の試験車両が保存されている。暑苦しさを我慢しながら線路沿いに歩いていくと、風洞技術センター敷地の北側から順にJR東海の955形電車「300X」、JR東日本の952形電車「STAR21」、そしてJR西日本の500形900番台電車「WIN350」が並んで展示されていた。

米原駅の近くにある鉄道総研の風洞技術センター。高速試験車両の300X(左手前)とSTAR21(中)、WIN350(右奥)が並んで保存されていた。【撮影:草町義和】

8本目:米原→三ノ宮

列車番号:3523M
距離:141.1km
時刻:米原18時47分→三ノ宮20時37分(1時間50分)

この日最後の列車はJR西日本の225系だった。【撮影:草町義和】

宵の口になったころ米原駅のホームに戻り、北陸本線の敦賀駅からやってきた播州赤穂行きの新快速3523Mに乗り込む。JR東海の313系に続き転換クロスシートの225系電車。ただ窓外は暗闇に包まれ、景色を楽しめる時間ではない。最初はがら空きだった車内は京都や大阪へと進んでいくなかで混雑していった。

この日は岡山か姫路まで進んで1泊するつもりだったが、神戸で夜景を楽しむのもいいかなと思ってスマートフォンで夜景スポットを調べる。すると、神戸と四国の高松を結ぶフェリーが運航されており、夜行便もあることに気づいた。この夜行便と瀬戸大橋を渡る快速列車を乗り継げば、そのまま東京→九州のルートに復帰できる。

20時37分、神戸の中心駅である三ノ宮駅で下車。まずは近くのファミリーレストランで夕食をとり、さらに銭湯に立ち寄って1日の汗を流す。

考えを変えて神戸の三ノ宮駅で下車。【撮影:草町義和】

高松行きフェリーはジャンボフェリーという会社が運航しており、三ノ宮駅から1.4kmほど離れた神戸三宮フェリーターミナルから出港する。有料の送迎バスも運行されているようだが、たいした距離ではない。三ノ宮駅からフェリーターミナルへまっすぐ延びる道路を歩いた。

途中、高速道路の高架橋をくぐる部分に「174 日本で一番短い国道です L=187.1m」と記された看板があった。日本一短い国道174号が神戸にあることは知っていたが、三ノ宮駅とフェリーターミナルを結ぶ道路の一部を構成していたことは知らなかった。ここにあったのかと思う。

三ノ宮駅からフェリーターミナルの途中に日本一短い国道があった。【撮影:草町義和】

9本目:神戸三宮フェリーターミナル→高松東港

運航番号:ジャンボフェリー1便
距離:119.0km
時刻:神戸三宮フェリーターミナル1時00分→高松東港5時15分(4時間15分)

神戸三宮フェリーターミナルで出港を待つ「りつりん2」。【撮影:草町義和】

フェリーターミナルには23時ごろ到着。高松行きフェリー「りつりん2」が出港を待って停泊しているのが見えた。

当然ながら「青春18きっぷ」でジャンボフェリーには乗れないので、ターミナル1階の窓口で自由席の切符を購入。所定の運賃は1990円だが、これに深夜料金と土休日料金、さらに燃油サーチャージが追加されて3070円だった。それでもホテルで1泊するよりは安い。2階の待合室に入ったときはガラガラだったが、少しウトウトして目を開けると、周囲はいつのまにか人だらけになっていた。

日付変わって0時30分ごろに改札開始。いくら待合室が混雑してもフェリーは定員以上の客を乗せないはずだし、寝床を確保できないことはないだろう思ってゆっくり乗船する。しかし自由席の畳敷きエリアに入ると、コンセントがあるスペースは先に乗り込んだ客で埋まっていた。朝からずっとコンセントのない普通列車で移動し続けたため、スマホのバッテリー残量はギリギリ。モバイルバッテリーも残量が少なくなっており、ここで充電しておかないとまずい。指定席は余裕がありそうだったので、追加料金を払おうかと思案する。

ふとラウンジスペースに出てみると、コンセントがあるソファの近くにござを敷いて寝転がっている人がけっこういる。ござはラウンジスペースに置かれた箱に入っていて、無料で貸し出されていた。結局、自分もコンセント付きソファの近くにござを敷いて充電や就寝の準備を進めるなか、「りつりん2」は静かに出港。デッキに出て神戸の夜景を堪能してから「寝床」につく。

日付変わって1時に出港。しばし神戸の夜景を堪能する。【撮影:草町義和】

しかし「イレギュラー」な場所のせいか、2時間もしないうちに目がさえてしまう。深夜にもかかわらず2階のうどんコーナーは営業中。一瞬とはいえ香川県内に入るのだし、せっかくだからと「さぬきレモンうどん」を夜食とした。

ジャンボフェリーのうどんコーナーは深夜も営業していた。【撮影:草町義和】

再び少し眠って5時前後だったが、入港間近であることを案内する音楽が流れてきた。5時15分ごろ、高松東港に着岸。ここから高松駅までは4km弱離れているが、無料の送迎バスが運行されている。しかし混雑のため1本目の送迎バスには乗れず、2本目に乗車。着岸から40分後の5時55分ごろ、やっと高松駅に着いた。

早朝5時過ぎに高松東港に到着。当初の考えにはなかった四国入りだ。【撮影:草町義和】

10本目:高松→岡山

列車番号:快速3106M「マリンライナー6号」
距離:71.8km
時刻:高松6時08分→岡山7時04分(56分)

高松東港から無料の送迎バスで高松駅に到着。【撮影:草町義和】

高松駅は当初訪ねる考えがなかったJR四国のエリア。しかしJR旅客6社が共同で発売している「青春18きっぷ」なら運営会社のエリアなど気にする必要はなく、そのまま利用できる。高松駅に着いてすぐに自動改札機を通り抜けると、岡山行き快速3106M「マリンライナー6号」が発車を待っていた。

高松駅で発車を待つ快速「マリンライナー6号」。【撮影:草町義和】

今回利用する快速・普通列車では唯一の愛称付きで、JR西日本223系電車とJR四国5000系電車の混成6両。2階建てのグリーン車指定席・普通車指定席も1両連結されている。私は転換クロスシートの普通車自由席に乗車。朝早いということもあって1両につき数人程度の閑古鳥だ。

「マリンライナー6号」は6時08分、高松駅を発車する。しばらく予讃線を走るが、20分弱で瀬戸大橋線に入る。いつしか非常に高い高架橋を走るようになり、瀬戸大橋の下層部に進入。窓外には朝日に照らし出された瀬戸内海が広がる。四国滞在時間はわずか1時間ほどだった。

高松駅を出て20分ほどで瀬戸大橋に突入。瀬戸内海が広がる。【撮影:草町義和】

6時37分着の児島駅でJR西日本のエリアに戻る。列車は順調に走り、大元駅を発車して次は岡山駅……というところで列車は停止。車内放送によれば、岡山駅構内で信号トラブルが発生したとのこと。徐行と停止を繰り返しつつ8分遅れの7時12分、岡山駅のホームに滑り込んだ。

よく見ると高松・出雲市行きの寝台特急「サンライズ瀬戸・出雲」が停車している。所定の時刻なら6時34分までに発車しているはずで、すでに40分ほどの遅れだ。これに比べたら8分など遅れのうちに入らない、といえなくもないか。

岡山駅では大幅遅延の「サンライズ瀬戸・出雲」が待ち構えていた。【撮影:草町義和】

11本目:岡山→糸崎

列車番号:1711M
距離:87.5km
時刻:岡山7時34分→糸崎9時01分(1時間24分)

改札口近くのコンビニエンスストアで朝食のサンドイッチと缶コーヒーを買い、糸崎行き普通列車の1711Mをホームで待つ。真っ黄色の国鉄115系電車ばかり岡山駅を出入りしていたので1711Mも115系だろうと思っていたら、やって来たのは2023年にデビューした新型の227系電車500番台「Urara」だった。

山陽本線1本目の列車は岡山地区に導入されたばかりの227系「Urara」。【撮影:草町義和】

ここから本来のルートに復帰し、山陽本線を西へ進む。転換クロスシートで客も少なく、ちょっとゆったりした気分になる。岡山県から広島県に移って東尾道駅を発車してしばらくすると、多数の島が浮かぶ瀬戸内海が見えてきた。ラッシュ時はともかくとしても、やはりクロスシートは景色を楽しみやすくていい。

東尾道駅を出てしばらくすると瀬戸内海が見えるように。【撮影:草町義和】

9時を過ぎて1711Mは終点の糸崎駅に到着。留置線が多く構内はやたら広いが、留置されている車両は少ない。かつてはここに機関区があったとのことで、その時代は多数の機関車がたむろしていたのだろう。

かつて機関区があった糸崎駅の構内は広いが留置車両は少ない。【撮影:草町義和】

跨線橋を渡って駅舎にたどり着くと改札は無人。実質的には簡易IC改札機であるゲートなしの自動改札機が鎮座しており、ICカードのタッチ部の下に切符の投入・取出口らしきものがあった。しかしよく見ると「青春18きっぷは入れないでください」との注意書きがある。実際は改札機の投入・取出口ではなく、使用済み切符の回収箱だった。

改札機の反対側には切符の取出口が当然ないから、途中下車のつもりでこの箱に切符を投入しようものなら、そのまま回収されてしまう。危うく「トラップ」にひっかかるところだった。

糸崎駅の改札に設置されているゲートなし自動改札機。ICタッチ部の下に設置されているのは改札機の切符の投入・取出口ではなく切符の回収箱だ。【撮影:草町義和】

12本目:糸崎→西条

列車番号:317M
距離:42.0km
時刻:糸崎9時53分→西条10時35分(42分)

糸崎駅の駅舎はレトロな風情。【撮影:草町義和】

列車の外にいると暑さが体にこたえる。次の列車まで相当な時間があるから駅周辺を散策しようかとも思っていたが、とてもそんな気分にはなれない。かといって駅舎の待合スペースも冷房はなく、近くのコンビニエンスストアに入って買い物がてら涼んだ。

次は大野浦行き普通列車の317M。ここまで乗ってきた1711Mと同じ転換クロスシートの227系だが、こちらは2015年にデビューした0番台「Red Wing」の6両編成。外装は赤ベースのデザインだ。

大野浦行き普通列車は岡山→糸崎に続いて227系だがデザインは異なり「Red Wing」の愛称がつけられている。【撮影:草町義和】

9時53分に発車。車内の客は1711Mよりやや多い感じか。列車は海から離れて山間部を進む。40分ほど乗って西条駅で下車。駅の北側の線路に貨物列車が停車しており、その最後尾の少し離れた場所にはEF210形が停車していた。

西条駅から2駅先の八本松駅と、さらに1駅の先の瀬野駅のあいだは「セノハチ」と呼ばれる急勾配区間で、大阪方面に向かう上り貨物列車は広島貨物ターミナル→西条で最後尾に補助機関車を連結している。

西条駅に停車していた上り貨物列車の最後尾には「セノハチ」補機のEF210形の姿があった。【撮影:草町義和】

13本目:西条→岩国

列車番号:1527M
距離:73.2km
時刻:西条10時51分→岩国12時20分(1時間29分)

西条駅の駅舎。暑さに耐えられずすぐにホームに戻った。【撮影:草町義和】

西条駅の外に出て駅舎や駅前広場を出入りするバスを眺めるが、やはり高温に包まれた世界にいるのはつらい。すぐにホームに戻って岩国行き普通列車1527Mに乗車。先ほどと同じ「Red Wing」だ。広島駅を出て30分ほど過ぎた大野浦駅の先で再び海が現れ、厳島(宮島)も見えるようになった。

大野浦駅を過ぎると宮島が見えるようになった。【画像】

広島県から山口県に移り、終点の岩国駅に到着。新しい橋上駅舎の改札に向かうと、出改札の窓口はシャッターが閉じられていて駅員の姿は見えず、自動改札しかない。

シャッターに貼られていた案内によると、改札営業時間は4時40分~11時と15時30分~1時。人口が10万人を超える岩国市の中心駅が時間限定ながら「無人駅」と化すのは少し違和感を覚える。新しい「青春18きっぷ」は自動改札も通れるから問題ないが、自動改札を通れない切符にはどう対応するのだろうか。

岩国駅は有人駅だが到着時には切符売場と改札口が無人だった。【撮影:草町義和】

よく見ると自動改札機のそばにインターホンが設置されており、その下に切符の撮影スペースが設けられている。客が撮影スペースに切符を置くことで遠隔地の業務センターから券面を確認し、問題がなければ自動改札機のゲートを遠隔操作で開くらしい。

14本目:岩国→小月

列車番号:3327M
距離:162.7km
時刻:岩国12時41分→小月15時51分(3時間10分)

岩国駅で発車を待つ3327M。ワンマン運転の表示を掲げている。【撮影:草町義和】

駅の西口側にあるコンビニで昼食の巻きずしと飲み物を買ってホームへ向かう。次に乗る下関行き普通列車3327Mは115系3000番台の4両編成。今回の旅では初の国鉄車両だが、座席は引き続き転換クロスシートだ。窓の外は青い空と大小さまざまな島が浮かぶ青い海が続き、見ていて飽きない。

車窓は青い空と青い海が続く。【撮影:草町義和】

車内はほどほどの入り。駅の到着時と発車時に自動音声の案内放送が流れ、車掌が乗務しないワンマン運転であることに気づく。4両編成でワンマン運転なのかと思うが、運転台近くには運賃箱や運賃案内表示器が設置されていないから、集改札は駅側で行っているようだ。

14時42分、新山口駅に到着。ここで20分ほどの長時間停車になる。ひたすら普通列車を乗り継いで長距離移動する場合、長時間停車する駅はホームや駅の外に出るなどして気分転換できる場所になる。しかし列車の外に出れば高温。駅の外どころかホームに長居する気にもなれなかった。

新山口駅では20分ほどの長時間停車。列車の外に出れば高温で気分転換にならない。【撮影:草町義和】

15本目:小月→下関

列車番号:3523M
距離:19.3km
時刻:小月16時11分→下関16時33分(22分)

本州最西端の下関市に入り、市内最初の駅となる小月駅で下車。切符売場と改札窓口は板で完全にふさがれており、終日無人駅であることが分かる。あとで調べたところ2カ月ほど前の6月に終日無人化されていた。

一方で改札口はインターホン付き、かつゲート付きの自動改札機。糸崎駅のようにゲートなしの改札機が設置されている無人駅なら自動改札非対応の切符でもそのまま出られるが、こちらは非対応の切符だとインターホンを使って係員を呼び出さなければならない。しかも岩国駅と異なり終日インターホン対応だ。

小月駅は終日無人化されて切符売場や改札窓口も板でふさがれている。一方で改札口はインターホン・ゲート付きの自動改札機。自動改札非対応の切符は必ずインターホンを使って改札を通過する必要がある。【撮影:草町義和】

駅前広場に出ればタクシーが3台も客待ちしていたから利用者は比較的多いはず。実際、山口県の統計上も1日平均の乗車人員は1701人(2023年度)で、無人化するレベルなのだろうかとは思う。もっともいまの時代、利用者数よりは人手不足が無人化の大きな理由なのだろう。

小月駅は利用者が比較的多く客待ちのタクシーも並んでいるが、いまは無人駅。【撮影:草町義和】

「青春18きっぷ」がリニューアルした理由としては、一つには自動改札機への対応があった。指定期間中の任意の日に「飛び飛び」でも利用できる切符は、自動改札機に対応させるのが難しい。そこで有効期間を連続方式に変えた面がある。

別に無理して自動改札に対応しなくてもいいと思うが、改札が小月駅のような構造の場合、自動改札非対応の切符ではインターホンで係員を呼び出さないと改札の外に出られない。とくに非対応の切符の利用者が増える時期は、係員の呼び出しに時間がかかるかもしれない。

少子化に伴う人口減少、人材不足に伴い、最近は小月駅のような改札構造の無人駅が増えつつある。そのため「青春18きっぷ」を無理やりにでも自動改札機に対応させるよう、リニューアルした面もあったのだろう。それによって使い勝手が悪くなってしまったのは本末転倒な気がしないでもないが。

一方で自動改札機への対応が難しいから「青春18きっぷ」を廃止、ではなく無理やりに対応させたことを考えると、たとえリニューアルで販売枚数が減ったとしても「青春18きっぷ」を残そうというJR旅客6社の強い意思があるのかもしれない、とも思う。

小月始発の下関行き普通列車3523Mに乗車。再び115系3000番台の4両編成で転換クロスシート、ワンマン列車だ。車内は最初のうち閑古鳥が鳴いていたが、駅に停車するたびに客が増えていった。

小月駅から乗った下関行き3523M。【撮影:草町義和】

16本目:下関→小倉

列車番号:5179M
距離:11.8km
時刻:下関16時37分→小倉16時52分(15分)

下関駅で3523M(右)から5170M(左)に乗り換え。JR九州のエリアに入る。【撮影:草町義和】

3523Mは16時33分、本州最西端の下関駅に到着。ここからはJR九州のエリアになり、隣に停車していた小倉行き普通列車5170Mに乗り込む。車両は国鉄最末期に製造された415系電車の1500番台でロングシート。もっとも乗車時間は短いし、走行区間のかなりの部分が関門トンネルで窓外の景色は楽しめないから、ロングシートでも特段の不満はない。

発車して数分で関門トンネルに突入。窓外は暗闇に包まれたが3分ほどで明るくなり、九州入りはあっけない。山口県から福岡県に移って門司駅に近づくと、直流電源から交流電源への切替地点。天井の照明が一瞬だけ消灯するが、窓外から入り込んでくる自然光が強すぎ、あまりよく分からないままま切替の「儀式」が終わった。

17本目:小倉→博多

列車番号:快速4227M
距離:67.2km
時刻:小倉17時13分→博多18時20分(1時間7分)

門司駅で山陽本線から鹿児島本線に移り、5179Mは16時52分、小倉駅に到着。JR北海道を除くJR旅客5社の快速・普通列車を利用したことになる。これで九州に到達したが、せっかくだから九州最大都市の福岡市の中心駅、博多駅までは足を伸ばしたい。ホーム上のラーメン店に入って豚骨ラーメンで軽く腹を満たし、大牟田行き快速4772Mに乗り込んだ。

この旅で最後の食事は小倉駅ホーム上のラーメン店で食べた豚骨ラーメンだった。【撮影:草町義和】
この旅最後の列車は大牟田行き快速列車。【撮影:草町義和】

車両は817系電車の3両編成を2本つないだ6両編成。座席はロングシートだったが背もたれがやや高く、窓がない部分の席は頭のせも設置されている。小倉駅を発車していくつかの駅に停車するうちに客が少なくなり、反対側の大きな窓が全面的に視界に入って外の景色を楽しめるようになった。

客が少なければ足元は広々としているし、ロングシートも悪くない。ただクッションは非常に硬く、お尻が痛い。私はどちらかといえば硬めが好みだが、ここまで蓄積された疲労感が痛みを増幅させているのかもしれない。

快速4227Mは定刻18時20分、福岡市の中心駅である博多駅の5番線に滑り込んだ。東京駅から博多駅まで16本の快速・普通列車とフェリーを乗り継いで約1200km、34時間11分の道のりだった。

最終地点の博多駅に到着。東京駅から34時間以上かかった。【撮影:草町義和】

所要時間や乗り継いだ列車・船の数は2年前の上野→札幌とほぼ同じだったが、前回は意外と疲れを感じなかったのに対し、今回は思っていた以上に疲れた。多少は炎天下のなかを歩いたし、東北・北海道方面に比べて気温の高いところを通ってきたのが影響したのかもしれない。

実質2770円の値上げだが…

博多駅に到着後は山陽新幹線と山陽本線を乗り継いで下関駅近くのホテルに1泊した。3日目は下関→宮島口を普通列車で移動し、「青春18きっぷ」で利用できるJR西日本宮島フェリーで宮島まで1往復。その後は広島電鉄の路面電車で広島市内に入り、飛行機で帰途についた。

3日目は広島方面に戻りJR西日本宮島フェリーに乗船。これも「青春18きっぷ」で利用できる。【撮影:草町義和】

この結果、「青春18きっぷ」を利用した区間は東京→三ノ宮と高松→博多、小倉→宮島口、宮島口~宮島(往復)になり、所定運賃なら合計2万2440円(宮島訪問税を除く)。1万円の3日間用「青春18きっぷ」を使ったことで半額以下になった。

ただ、リニューアル前の「青春18きっぷ」(5日分で1万2050円)なら、残り2日分を別の旅行で使用するという条件は付くが3日分の合計額が7230円だったから、実質的に2770円の値上げになったのは否めない。とはいえ、JR旅客6社共通で利用できる貴重な企画切符だし、実際に今回はJR旅客5社を乗り継いだから、利便性という面ではリニューアル前とたいした違いはない。

それより、これはリニューアルとは関係ないが、夏季に列車を頻繁に乗り継いで高温の外気に触れる時間が長くなる旅行は、かなりきついと感じた。私自身の加齢に加え、地球温暖化による近年の猛暑が疲労感を増幅させたのだろう。正直なところ、夏季用の「青春18きっぷ」はもう使いたくないとさえ思った。

気象庁の統計によると、「青春18きっぷ」が初めて発売された1982年(当時の名称は「青春18のびのびきっぷ」)の8月の平均気温は東京で27.1度。これに対して2025年8月の平均気温は29.6度で2度以上高い。「青春18きっぷ」による長距離利用にかかわらず、夏季の旅行環境が年々厳しさを増している。

「青春18きっぷ」は2024年度の販売枚数が前年度に比べ3割ほど減少した(2025年8月9日『読売新聞』中部朝刊による)。やはりリニューアルによって使い勝手が悪くなったのが主因だろう。ただそれとは別に、今後は夏季用「青春18きっぷ」の販売枚数の減少も顕在化するのではないか。逆に春季用や冬季用は販売枚数が増え、「青春18きっぷ」の事実上の秋季用である「秋の乗り放題パス」も利用者が増えるかもしれない。

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