地方空港で「京急電鉄」の切符を買ってみた 公式キャラ風の券売機、今後どうなる?



3月16日に開業した北陸新幹線・金沢~敦賀の報道関係者向け試乗会(2月1日)を取材した際、帰路は小松空港(石川県小松市)から羽田空港行きの飛行機を利用した。本当は鉄道を使いたかったが諸般の事情で空路になった。

小松空港に設置されている京急線の自動券売機。【撮影:草町義和】

空港のセキュリティチェックを過ぎて搭乗待合室に入ると、目の前にユニークなデザインの自動券売機が置かれていた。機器類を収めた外箱は赤と白、黒でデザインされ、券売機の下には「1000」の数字が刻まれている。そのいでたちは羽田空港のアクセス路線を運営する、京急電鉄の1000形電車に似ている。

ただ、外箱の脇には乗務員用のドアに加え、腕らしきものも描かれている。1000形というよりは、1000形を模した京急電鉄の公式キャラクター「けいきゅん」をイメージしてデザインされたものだ。券売機のタッチパネルにキャラクターの顔を表示すれば完全だが、このときは表示されなかった。

外箱の側面には「けいきゅん」の腕が描かれている。【撮影:草町義和】

この券売機では、羽田空港から京急線各駅までの乗車券を販売している。JR線(品川駅で乗り換え)や相互直通運転している都営浅草線も一部の駅まで切符を買うことが可能。さらに「京急ANAのマイルきっぷ」という企画切符も発売しており、発売額は所定の切符と同額だがANAのマイルがたまる。ただ、クレジットカードやICカードでの支払いには対応しておらず現金のみ。現金の投入口には新500円硬貨が使えない旨の案内紙が貼られていた。

羽田空港から京急線だけでなく都営浅草線やJR線への連絡切符も購入できる。【撮影:草町義和】
支払いは現金のみ。新500円硬貨には対応していない。【撮影:草町義和】

実際に乗車券を購入してみると、出てきた切符の大きさや表示内容は、京急線の駅に設置されている券売機で発売されているものとほぼ同じ。右下に記されている「小01」は小松空港の券売機で発売された切符であることを意味しているようだ。

通常の乗車券と大きな違いはない。【撮影:草町義和】

京急線の切符は当然ながら羽田空港に着いてからでも購入できるが、客が多い時期は券売機が混雑し、場合によっては予定していた列車に乗り遅れるかもしれない。それを考えると出発空港で事前に切符を購入できるのは便利だ。

羽田空港のアクセス鉄道は、かつては1964年に開業した東京モノレールだけで、羽田以外の空港に券売機を設置したのも東京モノレールが先だ。その後、京急電鉄も券売機を設置するようになり「ライバル競争」が全国各地の空港で展開されるようになった。2016年には京急電鉄の券売機が「けいきゅん」をデザインしたものに更新されている。

しかしこれ以降、全国相互利用サービスに対応した交通系ICカードの普及もあって縮小の一途をたどる。京急電鉄は2016年の時点で17空港に券売機を設置していたが、2019年から2023年にかけ6空港で設置を終了し、現在は11空港に。東京モノレールに至っては2023年9月限りで全面的に券売機の設置を終了した。

京急線の自動券売機が設置されている空港(2024年2月1日時点、赤は設置終了)。福岡空港は2024年3月31日限りで終了する。【画像:国土地理院地図、加工:鉄道プレスネット】
長崎空港(2022年9月)では京急(左)と東京モノレール(右)の券売機が並んでいたが、東京モノレールの券売機は2023年に終了した。【撮影:草町義和】

京急電鉄は私の取材に対し、各地の空港に設置している券売機の今後の計画について明らかにしなかった。しかし今年2024年3月26日、福岡空港に設置している券売機を3月31日限りで終了すると発表。これにより設置空港は10空港だけになる。いずれ各地の空港から「けいきゅん」の券売機が完全に消えるかもしれない。

ちなみに、成田空港アクセス特急「スカイライナー」を運行している京成電鉄は、「スカイライナーバリューチケット」という割引切符を発売。発売場所はLCC機内のほか新千歳空港、関西空港、福岡空港、西鉄線の西鉄福岡(天神)駅、沖縄都市モノレール線(ゆいレール)の那覇空港駅で、LCC機内と西鉄福岡(天神)駅を除き専用の券売機を設置している。

正確には切符そのものではなく引換券を発売しており、成田到着後に京成線の成田空港駅か空港第2ビル駅の窓口で座席指定された切符に引き換えなければならないが、割引価格で購入できるという魅力がある。ただ2021年以降は発売場所の追加がなく、こちらも今後の動向が気になるところだ。

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