北陸新幹線・金沢~敦賀の延伸開業(3月16日)が1カ月半後に迫った2月1日、JR西日本は延伸区間で報道関係者向けの試乗会を開催した。この日は敦賀→金沢(午前)と金沢→敦賀(午後)の合計2回、試乗会を実施。記者は敦賀駅から金沢行き試乗列車に乗ってみた。

敦賀駅は在来線ホームの南側に新幹線の高架駅を整備。3階に島式2面4線の新幹線ホーム、2階にコンコースが設けられたほか、1階にも島式2面4線の在来線特急用ホームが設置された。当面はここが大阪・名古屋方面の在来線特急と北陸新幹線の乗り継ぎ拠点になる。

コンコースの天井は北前船の帆をイメージしてデザイン。新幹線ホームの待合室や喫煙所も船を模したデザインとし、床は甲板をイメージした木材風のタイルを一部に使用している。



9時43分ごろ、試乗列車となるW7系電車のW21編成(12両)が13番線ホームに入線。10時13分、「ツヌガ君」など敦賀市の公認キャラクターなどの見送りを受けてホームを滑り出す。駅を出ると進行方向左側には敦賀の市街地、その奥には敦賀湾の水面(みなも)が見えた。

いったん短いトンネルに入り、続いて全長19.8kmの新北陸トンネルに進入。車窓は7分ほど暗闇に覆われる。かつて並行する北陸本線の北陸トンネルより6kmほど長い。北陸新幹線では飯山トンネル(飯山~上越妙高、22.3km)に次いで長く、国内の鉄道トンネル全体でも6位の長さを誇る。
新北陸トンネルを抜けて短いトンネルを出たり入ったりを繰り返しながら10時27分ごろ、越前たけふ駅に停車。相対式ホーム2面4線の高架駅で、並行する北陸本線の駅との連絡がない独立駅だ。

発車して5分ほどすると、窓の外には福井市の市街地が広がる。福井駅には10時37分ごろに到着。ここも高架駅だが新幹線は島式ホームが1面しかなく、列車の通過待ちには対応できない。車内放送では「新幹線で最もコンパクトな駅です」とアピールしていた。



福井駅を発車して市街地を過ぎて九頭竜川を渡り始めると、窓の外を道路照明灯らしきものが高速で後方に流れていく。北陸新幹線の九頭竜川橋梁は道路の新九頭竜橋と一体的に整備されており、新幹線の橋梁の両脇に道路橋が設けられている。新幹線と道路のスペースが上下に分かれている瀬戸大橋や大鳴門橋を除けば非常に珍しいが、防音壁が高くて自動車が走っている様子は見なかった。


10時47分ごろ、芦原温泉駅に停車。相対式ホーム2面2線で通過待ちには対応してないが、列車の通過を考慮してホームドアは奥まったところに設置されている。

数分ほどで発車し、短いトンネルを通り抜けて福井県から石川県へ。国道8号をまたぐ細坪架道橋(339m)では「エクストラドーズド橋」を採用。構造的には桁橋に違いが外観上は吊り橋の一種である斜張橋に似ていて、窓からも斜めに延びる構造物が見える。

石川県内では途中駅に停車せず、相対式ホーム2面4線の加賀温泉駅と相対式ホーム2面2線の小松駅を通過。比較的短いトンネルがいくつかあるだけで、高架橋の周囲は田園地帯が広がっている。この日はどんよりとした雲に覆われていたが、晴れていれば白山の威容が広がっていたはずだ。
ただ、人家が比較的多い場所では防音壁が高く、場所によっては窓外の景色がほとんど見えないほど高いところもある。乗客の立場としては少し残念なところだ。

11時03分ごろ、北陸新幹線の車両基地(白山総合車両所)の建物や架線柱らしきものが見えてきたが、ここも防音壁が高くて線路や車両までは見えない。車両基地からの線路が合流すると、ここからは2015年の長野~金沢延伸開業時に整備された部分を走る。


防音壁がやや低くなって金沢の市街地が見えてくると11時10分ごろ、金沢駅に到着した。駅名標の隣接駅表示は二つのうち一つがテープで隠されている。3月16日になれば、このテープがはがされて「こまつ(小松)」の文字が出てくるはずだ。

所要時間は57分。3月16日から運転される営業列車と停車駅は異なるが、各駅タイプの「はくたか」とほぼ同じだった。並行する北陸本線の特急列車は金沢~敦賀の所要時間が最短で1時間13分。すごく早いというわけではないが、もう金沢駅に着いたのかという感覚は覚えた。途中駅の大半を通過するタイプの「かがやき」なら最短41分で、30分以上の短縮だ。
2月3・4日には一般向け試乗会が開催される予定。JR西日本によると、当選者2000人に対し応募者総数は15万325人で、抽選倍率は約75倍だった。
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