宮城県富谷市は11月21日、仙台市と富谷市を結ぶ新しい公共交通の構想について、都市型自走式ロープウェイ「Zippar(ジッパー)」の導入が可能とした調査結果を公表した。富谷市は今後、これまで検討してきた地下鉄案やバス高速輸送システム(BRT)案も含めて詳細な検討を行う方針だ。

導入可能性調査は5月から10月にかけて実施。Zipparの開発元であるZip Infrastructure(ジップ・インフラストラクチャー)に339万8365円で委託し、導入ルートや概算事業費、収支計画を検討した。
調査結果の報告書によると、整備区間は仙台市営地下鉄南北線の泉中央駅付近から富谷市内の明石台地区まで。幅の広い道路を中心にルートを作成し、将監トンネルの地表部を経由する直線状の「ルート(1)」(約3.45km)と、将監第1団地を経由する「ルート(2)」(約4.05km)の2案を選定した。

ルート(1)は高圧送電線との交差が生じ、ルート(2)も高圧送電線に加え高架道路との交差が生じる。高圧送電線の上を通る場合は落下物が電線に接触して停電事故などを引き起こすおそれがあることから、高圧送電線の下を通るルートを設定。高圧送電線とZippar施設の間隔を6m以上あける。高架道路との交差部は高架道路の上を通るものとし、走行高さは約23mを確保。高架道路の建築限界に入らないよう設定した。


カーブの半径は2案とも最小20mとした。駅の面積は島式ホームが約200平方mで、相対式ホームは約400平方mを想定。車両基地は必要車両数によっては設置が必要になるとし、設置しない場合は起終点駅に車庫や点検場などを併設する。車両1台の定員は12人。表定速度は25km/hと仮定した。
これらの条件に基づき需要予測を実施。1日平均の想定利用人数は2案とも1万760人で、ピーク1時間あたりでは地下鉄案(2304人)とBRT案(1440人)の中間値となる1872人とした。この需要予測に基づく所要時間や必要車両数(予備3台含む)は、ルート(1)案が約8分で47台の車両が必要。ルート(2)案は所要時間を約10分として車両数は50台とした。
概算事業費は駅舎を相対式ホーム地上駅と仮定し、用地費を含めずに試算。ルート(1)が100億800万円で、ルート(2)は146億8800万円とした。2022年度調査の地下鉄案(354億~451億円)より大幅に安い。一方で2023年度調査のBRT案は地下バスターミナルを新設する場合でZipparを上回る193億~208億円だが、既設バスターミナルを活用する場合は85億~103億円でZipparのほうが高くなる場合もある。ただし報告書は「各調査年度における数値を使用しており、昨今の物価高騰を考慮していないため、単純な比較はできない」としている。

単年度の概算事業収支は、運賃を現在のバスと同額(泉中央駅~明石台西、280円)とした場合、上下分離方式でルート(1)が5億9400万円の黒字。ルート(2)も5億5700万円の黒字と算出した。施設部の補助金がある場合はルート(1)が4億1200万円の黒字で、ルート(2)は3億800万円の黒字。補助金がない場合でもルート(1)が2億3100万円の黒字で、ルート(2)は6000万円の黒字とした。
報告書はこれらの結果から、用地調整や高圧送電線・高架道路との交差に課題が残るもののZipparの敷設は可能とし、次期調査で具体的なルート設計や精度の高い需要予測を実施する必要があると結論付けている。
ロープウェイは地上側に設置した動力装置でロープを動かし、ロープに固定されたゴンドラなどの搬器を移動させる乗り物。これに対してZip Infrastructureが開発を進めている自走式ロープウェイのZipparは、搬器にバッテリーやモーターを搭載し、自動運転を行う。営業実績はないが、富谷市のほか北海道石狩市など各地で導入を目指す動きがある。
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