宮城県富谷市は同市が検討を進めている「基幹公共交通軸」の整備について、従来の地下鉄延伸やバス高速輸送システム(BRT)導入に加え「都市型ロープウェイ」の導入も検討する方針を示した。11月27日に開かれた地域公共交通活性化協議会の第3回会合で明らかにした。
富谷市は隣接する仙台市の泉中央地区から富谷市内の明石台、成田を経て大清水に至るルートを「都市主軸」と位置づけており、このうち泉中央~明石台の約3kmに鉄道など一定の輸送力や定時性を確保した基幹公共交通軸を整備することを構想している。

2022年度は仙台市営地下鉄南北線を泉中央駅から延伸する場合の採算性を検討。翌2023年度は専用地下道を燃料電池バスや電気バスが走行するBRTの導入可能性を検討した。これまでの調査では、地下鉄の概算事業費が354億~451億円で、上下一体・PFI方式で整備する場合は開業後21~33年で黒字転換が可能。BRTの概算事業費は85億~208億円で、開業後13~30年での黒字転換が可能としている。
富谷市は「近年実用化が期待される新たなモビリティとして、都市型の自走式ロープウェイが注目されており、これまでの地下鉄やBRTの整備に加えて、新たな交通システムの導入可能性の検討が必要」とし、都市型ロープウェイの導入可能性も調査、検討することにした。また、明石台地区に交通結節点を集約し、基幹公共交通軸の交通機関と市内各所を結ぶ二次交通を接続する拠点として整備することも検討する。
富谷市は今後、基本公共交通の整備について地下鉄やBRT、都市型ロープウェイを比較、検討する。2025~2029年度には基本計画などの策定や関係機関との調整を行い、2030年度以降に導入する方針だ。
都市型ロープウェイは海外では複数の例があり、南米ボリビアの事実上の首都ラパスとその周辺都市を結ぶ都市型ロープウェイのネットワーク「ミ・テレフェリコ」(合計約30km)は世界最長を誇る。日本では2021年4月、横浜市内に全長約600mの都市型ロープウェイ「YOKOHAMA AIR CABIN」(横浜エアキャビン)が開業。ほかに北海道石狩市などが導入を検討している。鉄道に比べ地形などによる制約が少なく建設費が安いなどの利点がある反面、輸送力が小さいなどの課題がある。


富谷市が挙げた自走式ロープウェイは、日本企業のZip Infrastructure(ジップ・インフラストラクチャー)が開発を進めている。営業運転の実績はない。
《関連記事》
・廃止されたスカイレールの車両「自走式ロープウェイ」開発企業に譲渡へ
・石狩~札幌「新たな軌道系交通」3ルート検討 ロープウェイ整備なら国内最長に