「川崎のゴミ」運ぶ貨物列車、運行開始30年 道路混雑の緩和などに大きく寄与



JR貨物の貨物列車「クリーンかわさき号」が今年2025年10月6日に運行開始30年を迎えた。川崎市内で発生するゴミを処理施設まで運んでいる。

川崎市内で運行されている貨物列車「クリーンかわさき号」。【画像:川崎市】

1980年代の川崎市はゴミ処理施設を市内各所に配置。ゴミ収集車が近隣の処理センターに直接搬入していた。しかし都市化の進展でゴミの排出量も増加。とくに北部地域の排出量が急増し、ゴミ処理能力が限界に近づいた。そのため川崎市は1990年に「ごみ非常事態」を宣言。湾岸部の浮島地区に新しいゴミ処理センターを整備し、北部で発生したゴミを浮島処理センターまで運ぶことになった。

ただ、北部から浮島までの距離は少なくみても10km以上はある。ゴミ収集車で搬入するには時間がかかり、道路混雑の原因にもなりかねない。そこで考えられたのが鉄道の利用だった。

川崎市には市内を縦断する鉄道としてJRの南武線に加え武蔵野線の貨物バイパス線(武蔵野貨物線)があり、北部には武蔵野貨物線の梶ヶ谷貨物ターミナル駅が設けられている。一方で浮島周辺にも貨物線の神奈川臨海鉄道浮島線がある。北部から浮島まで貨物列車でゴミを運べば、道路交通への影響を最小限に抑えつつ、一度に大量のゴミを処理施設に搬入することができる。

ただ、恒常的にゴミ輸送列車を運行している例は英国やドイツ、米国などにあったものの、日本には前例がなかった。川崎市は1991年度に基礎調査を実施。自動車による効率的な収集運搬体制や鉄道・船舶によるゴミ輸送の調査を行い、新しいゴミ輸送システムとして鉄道輸送も可能性の一つとして挙げられると結論付けた。一方でJR貨物はゴミ輸送を引き受けられるとの見解を示したが、同社の規則では臭気や廃棄物が漏れ出したり散乱したりしない措置を施す必要があるとされていた。そのためゴミ輸送専用のコンテナが新たに開発された。

「クリーンかわさき号」で使われているゴミ専用コンテナ。【撮影:草町義和】
ゴミ専用コンテナをコンテナ車に搭載した状態。【画像:川崎市】

こうして1995年10月に川崎市の浮島処理センターが完成し、同月6日から廃棄物専用列車「クリーンかわさき号」が運行を開始した。

まず専用コンテナを搭載したゴミ収集車が北部地域でゴミを収集後、梶ヶ谷貨物ターミナル駅へ。ここで専用コンテナを「クリーンかわさき号」のコンテナ車に載せ替える。梶ヶ谷貨物ターミナル駅を発車した「クリーンかわさき号」は、武蔵野貨物線や南武線浜川崎支線、東海道本線の貨物支線を経て神奈川臨海鉄道浮島線の末広町駅へ。専用コンテナをトレーラーに載せ替えて浮島処理センターに搬入する。

「クリーンかわさき号」の運行経路など。【画像:川崎市】

現在の「クリーンかわさき号」は梶ヶ谷貨物ターミナル~末広町で1日1便運行。年間輸送量は2024年度で3万3000t以上、コンテナ数では1万2000個以上だった。当初は普通ゴミや焼却灰、粗大ゴミを輸送していたが、1998年度ごろからは川崎市の廃棄物処理体制にあわせて輸送品目を変え、現在は焼却灰とプラスチック製容器包装を輸送している。

廃棄物の恒常的な鉄道輸送は「クリーンかわさき号」が日本初で、現在も国内唯一。川崎市は「廃棄物鉄道輸送を活用することで、ごみ処理を停滞させることなく安定的に処理でき、交通混雑の緩和や自動車による輸送と比較して温室効果ガス削減に大きく寄与しています」と鉄道利用のメリットをアピールしている。

川崎市は今年2025年10月から1年間、「クリーンかわさき号」の30周年を記念したイベントを順次開催する考え。川崎市内の鉄道写真を公募して市役所などで公開するほか、各種イベントへの出展や廃棄物鉄道輸送の歴史などに関する展示を行う予定だ。

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