「岐阜LRT」県が検討本格化へ 3路線を整備、中国や台湾で実用化の方式を想定



岐阜県は路面電車方式の軽量軌道交通(LRT)の導入について検討を本格化させる。9月11日、調査費を盛り込んだ補正予算案を発表。9月18日に開会する県議会に提出する。

岐阜県のLRT構想で導入が考えられている架線レス方式の路面電車(中国・淮安)。【撮影:草町義和】

予算案に盛り込まれたのは「まちの賑わい創出に向けたまちづくりの推進」で3000万円。「新しい交通システム」の導入に向けて事業スキームや交通網の再編を調査、検討する。

岐阜県の江崎禎英知事は7月の県議会でLRT導入の検討を行っていることを明らかにしていた。江崎知事によると、ルートは岐阜羽島駅~県庁~岐阜駅と岐阜市内~岐阜インターチェンジ、岐阜駅~金華山~国際会議場~岐阜駅(循環)の3路線で合計20km程度を想定。架線レス方式の採用を考えているという。

岐阜県がLRTの整備を構想している地域。【画像:OpenRailwayMap/OpenStreerMap、加工:鉄道プレスネット】

架線レス方式は電車に搭載した蓄電地からモーターに電力を供給し、架線を敷設しない方式。蓄電池への充電は駅や車両基地などで行う。架線がないことから建設費や維持費の削減に加え、景観的に優れているといったメリットがあるとされる。中国や台湾の路面電車で実用化されている。

中国・淮安の路面電車。通常は上部にあるはずの架線がない。【撮影:草町義和】
中国・淮安の路面電車は停留場に架線を設置して電車が停車中に充電する。【撮影:草町義和】

岐阜県は調査費の計上について「8月30日に東海環状自動車道が一部開通し、名神高速と東海北陸自動車道がつながり、岐阜圏域の東西南北から人とモノの迎え入れが可能となる。この道路ネットワークを最大限活用する必要がある」「岐阜圏域には、魅力ある拠点が数多く存在しているが、それぞれが点で存在しており、それらを有機的に『線』で結び、『面』として賑わいを広げる取組みが求められている」とし、新しい交通システムの導入可能性を調査するとしている。

想定されている3路線はルートの大半が岐阜市内になる。かつては名鉄が岐阜市を中心とした地域で路面電車を運行していたが、2005年までに全廃。その後はバスを中心とした公共交通ネットワークの整備が進んだ。

岐阜市を中心とした地域で運行されていた名鉄の路面電車(2005年)。【撮影:草町義和】

岐阜市の柴橋正直市長は岐阜県のLRT構想について「反対をしているとかいうことではない」としつつ、複数の課題があるとして慎重な姿勢を取っている。柴橋市長は課題として事業費や事業採算性に加え、軌道の道路敷設による車線減少とそれに伴う渋滞悪化の可能性、名鉄竹鼻線や岐阜バスなど既存の電車・バスとの競合、道路下に埋設されている上下水道やガス管など既存インフラへの影響などを挙げている。一方で岐阜市は架線レス方式の路面電車が導入されている台湾の視察を計画している。

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