ウクライナの鉄道「欧州規格」に移行か 台車交換せず直通、線路幅のほかにも課題が



ウクライナのデニス・シュミハリ首相は5月24日、ウクライナの鉄道を「欧州規格」に移行させる考えを明らかにした。ウクライナのメディア『thepage.ua』などが報じた。

ウクライナのオデッサ駅。【画像:Dimitry Anikin/Pixabay】

シュミハリ首相は「まず主要拠点や大都市を結ぶ鉄道を欧州規格に変える。その後、全土の鉄道を徐々に欧州規格に変えていく」と話したという。

ウクライナの鉄道の2本のレール幅(軌間)は1520mmの広軌を採用。周辺国はロシア・ベラルーシ・モルドバの旧ソ連諸国がウクライナと同じ1520mmで直通運転が可能だ。一方、欧州連合(EU)加盟国のポーランド・スロバキア・ハンガリー・ルーマニアは日本の新幹線などと同じ1435mmの標準軌を採用。現在は国境の駅で台車を交換して直通運転を行っているが、交換作業には相当な時間がかかり、所要時間の短縮や輸送力向上の障壁になっている。

ウクライナと周辺国のおもな軌間(赤=1520mm、青=1435mm)。【画像:OpenStreetMap、加工:鉄道プレスネット】
中国(1435mm)とカザフスタン(1520mm)を結ぶ国際列車は国境の駅で台車を交換する。【撮影:草町義和】

このため、標準軌を採用した鉄道の整備構想が以前から浮上しており、2021年2月にウクライナは全長2000kmに及ぶ欧州規格の高速鉄道(250km/h)を整備する計画を発表していた。

標準軌への移行はEUとの連携を深められるなどの利点があるが、一方で膨大な費用が課題になる。『thepage.ua』などの報道によると、ウクライナ全土の鉄道ネットワークを標準軌に改軌する場合、少なくとも1000億米ドルかかる。

ウクライナの鉄道で使われている穀物輸送用の貨車は幅が3224mm。欧州の多くの国は車両幅の最大許容値が3150mmと狭い。また、軸重(車軸にかかる重さ)はウクライナが最大23.5tなのに対し、近隣の多くの国は最大18~20t。こうしたこともあり、直通運転には線路の改軌だけでなく車両自体の交換なども必要になるという。

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