宇都宮市はライトラインの西側延伸について、路線計画・施設計画の検討状況や需要予測などを明らかにした。異常時やイベント時の対応施設として中間停留場の渡り線や車両の留置施設などの整備を新たに盛り込んだが、一方で地下埋設物が東側の既開業区間より多いなど課題も浮き彫りになった。

8月19日に開かれた芳賀・宇都宮基幹公共交通検討委員会で、宇都宮市が軌道運送高度化実施計画の策定に向けた現在の検討状況などを報告した。軌道運送高度化実施計画は地域交通法に基づく手続き。上下分離方式で軌道事業を行う場合、軌道運送高度化実施計画を国に申請して認定を受ける必要がある。認定を受ければ軌道法に基づく軌道事業特許を受けたとみなされる。
地下埋設物は東側の7倍
報告資料によると、西側延伸区間は宇都宮駅東口~教育会館前の4.9kmで、JR線と交差する部分を除く大半が複線の併用軌道。JR宇都宮駅西口・上河原・宮島町十文字・馬場町・県庁前・東武宇都宮駅前・裁判所前・新川・桜通り十文字・美術館前・護国神社前・教育会館前の12停留場(いずれも仮称)を新設する。

宇都宮駅東口停留場からいったん北上したのち、西に向きを変えて東北本線(宇都宮線)をまたいで東北新幹線の高架下をくぐり、南下して宇都宮駅の西口に出る。この先は大通り・馬場通り・国道119号・大谷街道を西に進み、道路中央部に軌道を敷設する。カーブが最も急な場所はJR線との交差部付近(半径30m)で、勾配が最も急な場所もJR線との交差部付近(60パーミル)になる。


12停留場のうちJR宇都宮駅西口・裁判所前・新川・桜通り十文字・美術館前の5停留場は相対式ホームを採用。このうち裁判所前停留場は交差点を挟んだ千鳥配置で整備する。それ以外の7停留場は島式ホームを採用する。
ホームの長さはこれまで30mとしていた。しかしJR宇都宮駅西口・東武宇都宮駅前・桜通り十文字・護国神社前の4停留場はピーク時に滞留空間の不足が見込まれることから40mに延長。馬場町・県庁前の2停留場も周辺の商業施設の立地状況から休日に多くの利用者が見込まれるとして40mに延長する。
JR宇都宮駅西口停留場の教育会館前寄りと教育会館前停留場の宇都宮駅東口寄りには、折り返しに対応した両渡り線を設置。このほか、東武宇都宮駅前停留場の教育会館前寄りにも片渡り線を設置し、異常時や大通りでのイベント開催時でも残区間で運行を継続できるようにする。

また、東武宇都宮駅前停留場付近は道路の勾配が40パーミルなのに対し、軌道建設規程では停留場の勾配を10パーミル以下にするよう定めている。このため停留場の部分は道路面よりやや高くして軌道の勾配を緩和することも検討する。

車両の留置施設としては既開業の東側区間に車両基地があるが、西側延伸区間にも留置施設を設ける。宇都宮市によると、整備区間が当初計画(宇都宮駅~桜通り十文字)よりさらに西へ延伸することになったことから、ピーク時などの輸送需要への対応や異常時・イベント時の対応を図るため補完的な留置施設が西側にも必要になったという。同市は留置施設の候補地として教育会館前停留場に近接する県有地を挙げている。

このほか、報告では大通りの導入空間を整備上の課題として挙げている。それによると、道路管理者や交通管理者などと協議して道路幅や拡幅範囲がおおむね確定。しかし裁判所前停留場から西側の区間は当初の見込みより多くの用地補償が必要で、そのなかにはマンションなどの共同住宅が複数含まれる。また、地下埋設物の延長は東側の7倍程度あり、その半分程度は移設が必要という。事業費の膨張は必至な状況だ。
速度も東側よりスピードダウン
サービス水準の目標は、運転時間が6~23時台。宇都宮駅を発着する始発・終着の東北新幹線の時間帯を参考に設定した。運転間隔は朝夕ピーク時が6分で、オフピーク時が10分。列車種別は普通列車のみとし、快速運行は想定してない。

最高運転速度は軌道運転規則に基づき全線40km/h。一方、停留場への停車時間を含む表定速度は東側の既開業区間が約19.5km/hなのに対し、西側延伸区間は上り(宇都宮駅方面)が約13km/h、下り(教育会館方面)が約12km/hとスピードダウンするものとしている。宇都宮市は「交通影響評価を踏まえた信号条件や停留場での停車時間を基に、交通シミュレーションを用いて算出した」としている。所要時間は宇都宮駅西口~教育会館前で上りが約20分、下りが約22分とした。
需要予測は国立社会保障・人口問題研究所の将来人口推計(2023年12月)や周辺の開発計画などを踏まえて実施。運賃は東側区間と同様の水準(150~500円)とし、運行間隔などの条件を変えた「最小需要ケース(ピーク時8分、オフピーク時12分)」と「特許需要ケース(ピーク時6分、オフピーク時10分)」「最大需要ケース(ピーク時4分、オフピーク時10分)」の3ケースを調査した。特許需要ケースは軌道運送高度化実施計画(みなし軌道事業特許)の申請時に使用する中間値になる。平日1日あたりの利用者数は最小で2万8645人、最大では3万3990人で、中間は3万1512人と試算した。


宇都宮市は今年2025年10月をめどに軌道運送高度化実施計画を申請する考え。2028年内の工事着手を目指す。従来は2030年の開業を目指していたが、用地買収の交渉や地下埋設物の移設に時間がかかるとみられ、同市は2030年の開業が厳しい見込みになったとしている。
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