京王電鉄「値上げ」10月1日から 相模原線の加算運賃廃止、精神障害者割引の導入も



国土交通大臣は6月23日、京王電鉄が申請していた旅客運賃の上限変更を認可した。これを受けて同社は10月1日に運賃を改定する。

線路の高架化工事が行われている京王線。【撮影:草町義和】

普通旅客運賃の上限は、新宿~笹塚など初乗り(4kmまで)が切符で現行130円から10円値上げの140円に。ICカードは現行126円から14円値上げの140円になる。新宿~高尾山口など最大距離(45~52km)では切符・ICカードともに430円。切符は40円の値上げ、ICカードは42円の値上げになる。

普通旅客運賃の現行額と改定額。【画像:京王電鉄】

定期旅客運賃の上限は、通勤定期を普通旅客運賃の値上げにあわせて改定し、割引率(1カ月)は現行と同じ37.6%。通学定期は家計負担に配慮して現行運賃を据え置くため、割引率は現行77.4%から80.1%に引き上げられる。

定期旅客運賃(大人1カ月)の現行額と改定額。【画像:京王電鉄】

「京王ライナー」「Mt.TAKAO号」の座席指定料金(410円)は据え置く。また、相模原線・京王多摩川~橋本で20~22kmの距離帯に設定されている加算運賃(普通旅客運賃20円、通勤定期760円、通学定期310円)は廃止される。普通旅客運賃と通勤定期は値上げ幅が実質縮小され、通学定期は実質値下げになる。

「京王ライナー」などで運用されている5000系。【撮影:草町義和】

精神障害者割引も今回の改定にあわせて導入。精神障害者保健福祉手帳(1級)を持っている客とその介護者について、普通乗車券を5割引にする。1級の手帳を持っていても本人単独の乗車時や2・3級の客は割引の対象外。PASMOなどのICカード乗車券や回数乗車券、定期乗車券も割引の対象外だ。

全体の改定率は13.3%。差引損益は2024~2026年度の3年間平均で現行のままなら96億6600万円の赤字だが、改定により13億2900万円の赤字に縮小する。

国土交通省によると、京王電鉄ではコロナ禍の影響は甚大で、コロナ禍以前の2018年度に対する輸送人員の減少率は2020年度で33.5%、2021年度でも26.1%となっている。鉄道事業の営業収支も2020年度97億円の赤字。2021年度も14億円と2期連続の営業赤字を計上している。輸送人員は回復基調にあるものの、テレワークなど新しい生活様式の浸透や沿線人口の減少などで、今後もコロナ禍前の水準には戻らないと見込む。

一方で増加する老朽施設の更新や、2021年10月に京王線で発生した車内傷害事件を受けた防犯・セキュリティ対策、線路の高架化など大規模工事を継続的に推進する必要があり、京王電鉄の経営努力を前提に運賃改定が実施されるという。

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