名古屋~奈良「直通列車」関西本線で実証実験 三重県、衰退の名阪ルートを活性化



三重県で関西本線の名古屋~奈良を直通する列車の「復活」に向けた動きが活発になっている。山間部の亀山~加茂を結ぶ61.0kmの区間は利用者の減少で厳しい経営が続いており、三重県は直通列車の実証実験を行うことで名阪ルートとしては衰退した関西本線の活性化につなげたい考えだ。

かつて名古屋~奈良を直通運行していた急行「かすが」(1999年)。【撮影:草町義和】

現在の関西本線は運行系統が地域ごとに分割されており、名古屋~奈良の133.9kmでは三重県内の亀山駅と京都府内の加茂駅で快速・普通列車を2回乗り継ぐ必要がある。

三重県などが参加する関西本線活性化利用促進三重県会議が昨年2023年11月29日に開かれ、同県が直通列車の実証実験について報告した。直通運行が可能な気動車を使い、秋ごろに少なくとも2日間、実証実験を行う方向で調整を進めている。

三重県の一見勝之知事は12月5日の記者会見で「関西本線をいままで使っていなかったような人に乗っていただき、利便性を感じていただくのがいいかなと思っていた」「普段から関西本線を使っている人も『乗り換えなしに行けると非常にスムーズだ』と言っている」などと話し、直通列車による利便性の向上に期待を寄せた。

関西本線は1987年の国鉄分割民営化に伴い、運営会社が亀山駅を境に名古屋寄りがJR東海、奈良寄りがJR西日本に分かれている。利用促進会議にはJR東海が参加していない。一見知事は「JR東海とは事務的に話を始めている。おそらく協力してもらえると思う」と話した。

実証実験では通常の臨時列車として運行するか、あるいは旅行商品の購入が必要な団体列車として運行するかなど販売方法も課題になる。一見知事は12月15日の記者会見で「鉄道ファンが押し寄せて運行収入が確保できればありがたい話だが、逆に混雑してしまうと本来使われている方が使えないということにはなって欲しくないなという気持ちもある」と話しており、乗客を沿線住民に限定するなどの対策を取る可能性もありそうだ。

現在、名古屋~奈良では高速バスが直通運行されており、所定の所要時間は名鉄バスセンター(名古屋)~JR奈良駅で2時間35分~2時間50分。運賃は3000円だ。関西本線の名古屋~奈良は快速・普通列車の乗り継ぎで3時間前後と長いが、運賃は高速バスより700円ほど安い2310円。

かつて名古屋~奈良を直通運行していた急行「かすが」の場合、所要時間(2006年ごろ)は2時間10分ほど。現在の高速バスより20~40分ほど短い。一方、実証実験の列車を「かすが」と同じ急行として運行する場合、所定の運賃・料金の合計は普通車自由席で3310円、普通車指定席なら3640円以上で高速バスより高くなる。

関西本線と直通列車の運行が考えられている区間(赤)。【画像:OpenRailwayMap/OpenStreetMap、加工:鉄道プレスネット】

関西本線は愛知・三重・京都・奈良・大阪の5府県をまたいで名古屋~亀山~奈良~JR難波の174.9kmを結ぶ路線。明治期に私鉄の関西鉄道の路線として開業して国鉄東海道本線と激しく競争し、1907年の国有化後も現在の近鉄線との競争を繰り広げるなど名阪ルートの一翼を担っていた。

かつては名古屋~湊町(現在のJR難波)を直通する列車も運行されていたが、戦後は東海道本線の電化や東海道新幹線の開業、並行する近鉄線の直通化などで利用者が減って衰退。電化や複線化などの改良も遅れ、亀山~加茂は現在も非電化単線だ。

1968年10月のダイヤ改正時点では、直通の急行列車は名古屋~奈良・湊町の「かすが」や名古屋~京都の「平安」があった。しかし1973年には「かすが」全列車の運行区間が名古屋~奈良に縮小。1985年に「平安」が廃止されて「かすが」も1往復に減便された。「かすが」はJR化後の1999年には新型のキハ75形気動車が導入されたものの、2006年に廃止されている。

現在、亀山~加茂は1両か2両編成の気動車が運行されるだけになり、日中は普通列車が1時間に1本しか走っていない。輸送密度はJR西日本発足時の1987年度で4294人だったが、沿線の人口減少や車社会の進展で減少。コロナ禍が本格化する前の2019年度は1090人で、2022年度は1000人を割り込んで864人になっている。経営も厳しく、2020年度~2022年度は100円の収入を得るのに1046円の費用がかっている。

関西本線の亀山~加茂で運行されているキハ120形気動車の普通列車。【画像:ポニー/写真AC】

2022年には三重県と沿線の亀山市、伊賀市、JR西日本で構成される利用促進会議が設立され、関西本線を通勤で利用していない沿線の人を対象にチャージ済みのICカードを配布するなど、活性化に向けた取り組みを行っている。

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