城端線・氷見線「あいの風」2029年ごろ移管へ 富山県内のJR在来線40km弱に



JR西日本や富山県などで構成される城端線・氷見線再構築検討会の第5回会合が12月18日に開かれ、鉄道事業再構築実施計画が取りまとめられた。城端線と氷見線に新型車両を導入するなど利便性の向上を図るとともに、あいの風とやま鉄道が経営を引き継ぐ。経営移管は2029年ごろの見込み。

あいの風とやま鉄道に経営移管されることになった氷見線。【画像:くろてん/写真AC】

JR西日本が発表した実施計画の概要によると、鉄道事業再構築事業の実施予定期間は2024年2月15日から2034年3月31日までの10年間。城端線と氷見線で現在運用している24両を新型車両に置き換える。

新型車両は10両増の34両。電気式気動車を基本としつつ「車両メーカーの技術開発の最新の動向を踏まえ、鉄道事業者と協議の上、導入」(JR西日本)する。JR西日本は2021年に電気式気動車の試験車「DEC700」を導入して走行試験を行っており、これをベースに開発するとみられる。導入費は173億円で、車両製造費153億円(1両4億5000万円)に設計費やデザイン費など20億円が加わる。

JR西日本が開発を進めている電気式気動車「DEC700」。【画像:読者提供】

計画開始からおおむね5年後の2029年ごろには新型車両への導入を完了。これにあわせて城端線・氷見線の事業主体をJR西日本からあいの風とやま鉄道に変更する。

車両の増加に伴い増便やパターンダイヤ化のための施設改良(44億8000万円)も実施。現在の1日の運行本数は城端線が42本、氷見線が36本だが、両線ともあいの風とやま鉄道線・高岡~金沢と同レベルの60本程度に増やし、日中のパターンダイヤ化を図る。

このほか、交通系ICカード対応改札機の設置(4億6000万円)や城端線・氷見線の直通化(37億8000万円)、各種既存設備の改修(81億円)も行う。

再構築事業による施設整備費は342億円。このうち128億円を国が負担し、富山県と沿線4市がそれぞれ75億円、JR西日本が86億円を負担する。ほかに2029年度以降に活用する経営安定支援費として40億円を富山県(11億円)と4市(11億円)、JR西日本(18億円)が負担する。JR西日本は150億円を拠出。このうち104億円を施設整備費と経営安定支援に回し、差額の46億円は経営移管後6年目以降の負担に備えて経営安定基金に積み立てる。

これらの施策により、高岡駅を中心とした富山県西部の交通ネットワークを強化。1日の利用者数は2022年度(9609人)に比べ約2400人増の1万2000人を目指す。年間収支も2022年度(10億8600万円の赤字)に比べ3億8000万円改善して7億600万円の赤字にすることを目指す。

JR西日本は再構築事業の実施計画がまとまったのを受け、「速やかに、地域公共交通の活性化及び再生に関する法律(地域公共交通活性化法)に基づき、地域の皆様とともに国土交通大臣へ申請してまいります」とコメントしている。

輸送密度は国鉄時代の3~4割に

城端線は旧・北陸本線のあいの風とやま鉄道線・高岡駅から南下して城端駅までの29.9kmを結ぶJR線。高岡駅の一つ隣の新高岡駅で北陸新幹線と連絡している。氷見線も高岡駅を起点に北上し、富山湾岸の氷見駅まで16.5kmを結ぶ。両線とも単線・非電化。

富山県内のJR在来線の位置。【画像:OpenRailwayMap/OpenStreetMap、加工:鉄道プレスネット】

輸送密度は国鉄時代の1977~1979年度で城端線が6621人、氷見線が7271人。1980年に国鉄再建法が公布されて国鉄ローカル線のバス転換や第三セクター化が実施されたが、その基準が輸送密度4000人未満だったため両線ともバス転換・第三セクター化の対象外になった。

しかしJR西日本発足時の1987年度は城端線が4479人、氷見線が4416人に減少。その後も自動車交通の発達や少子高齢化などの影響を受け、コロナ禍前の2018年度で城端線が2899人、氷見線が2552人と4000人を大きく下回っている。2022年度の輸送密度は城端線が2481人で、1977~1979年度の4割弱。氷見線も3割弱の2157人に落ち込んでいる。

JR西日本と富山県、沿線の高岡市・氷見市・砺波市・南砺市は2020年1月、城端線・氷見線の維持や活性化に向けた検討に着手すると発表。同年6月から軽量軌道交通(LRT)への転換を目指して検討会を設置し、ほかの交通モードとの比較検討も含め検討してきた。

しかし、LRT化の費用が421億円かかるのに対し、単線・非電化の現行設備のまま新型車両を導入する場合の費用はLRT化より安い131億円との調査結果が出たことから、今年2023年3月には新型車両の導入に方針転換。7月には再構築検討会が設置され、経営体制の変更も含め議論が行われていた。

城端線の普通列車。【撮影:草町義和】

富山県内のJR在来線は2000年代初頭で総延長が約180kmだったが、富山港線の第三セクター化(富山ライトレール、のちに富山地方鉄道に合併)や北陸新幹線の開業に伴う北陸本線の第三セクター化(あいの風とやま鉄道)で大幅に減少。現在は城端線・氷見線と高山本線・猪谷~富山の36.6km、新湊線(貨物線)・能町~高岡貨物の1.9kmで合計約80kmに縮小した。城端線・氷見線の経営移管が行われた場合、富山県内のJR在来線の総延長は40km弱になると見られ、沖縄県(0km)に次いで2番目に短くなりそうだ。

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