最近は鉄道マニアであることを公言する政治家が増えたように思う。10月4日に国土交通大臣に就任した衆議院議員の斉藤鉄夫氏(公明党、比例中国)も、その一人だ。
斉藤氏の公式ウェブサイトには、「趣味」の項目に「自他ともに認める鉄道マニア」と記されている。2018年9月30日付けの時事通信によれば時刻表を眺めるのが息抜きといい、いわゆる「時刻表鉄」のようだ。また、「新交通システム推進議員連盟(通称:LRT推進議連)会」の会員で副会長を務めている。
その斉藤氏はかつて、東海道・山陽新幹線「のぞみ」が広島駅を通過する可能性に言及したことがある。
いまから20年以上前の1998年11月27日、広島市が広島に縁のある国会議員を対象に開いた1999年度主要事業の説明会でのこと。翌日の中国新聞朝刊によると、広島市との質疑応答で斉藤氏が「JRが昨春(記者注:1997年3月)、導入した500系のぞみの運行時間短縮のため、一部のダイヤを岡山には止めるが広島は通過させることを検討しているとの情報があるが、どうか」と質問した。
これに対して当時の平岡敬市長は「初めて聞いた。(その計画は)断固としてつぶさねばならない」と応じたが、説明会の閉会後には「広島駅ほどの乗降客数で、客を運ぶ商売のJRがまさか…」と話していたという。
500系電車はJR西日本が山陽新幹線の高速化を目的に開発し、1997年3月にデビューした車両。東海道・山陽新幹線の最速列車「のぞみ」に導入され、営業運転では日本で初めて最高速度300km/hでの運転を実現した。騒音対策のためノーズ(先頭部の鼻のような部分)が長く、車体は円筒形。戦闘機のようなフォルムはいまでも人気が高い。
これより5年前の1992年、東海道新幹線で300系電車による「のぞみ」の運転が始まった際、朝の下り1本が名古屋駅を通過するダイヤを組んだ。いわゆる「名古屋飛ばし」で、中京圏の政財界では強い反発の声が上がった。名古屋駅の通過は500系「のぞみ」の導入にあわせて1997年には終了したが、たとえ大都市の中心駅でも、新幹線の列車が通過することがあるという前例ができたのは確か。斉藤氏の発言もそれなりに真実味を帯びていた。
ただ、中国新聞朝刊の記事には、JR西日本本社広報室の「そんな計画はまったくないし、検討したこともない」とのコメントも掲載されている。これに関する続報がないかと新聞報道をいくつかあたってみたが、確認できなかった。
当時の斉藤氏は「技術開発陣の中に『一分でも早く』という悲願があり、検討は間違いない」(中国新聞朝刊)と話していたが、それから20年以上が過ぎたいまも、「のぞみ」は広島駅に停車している。500系は「のぞみ」での運用を後継車両のN700系電車に譲り、いまは編成を短縮して山陽新幹線の「こだま」を中心に運用。「のぞみ」時代より停車駅が大幅に増えた。
《関連記事》
・山陽新幹線「帆坂保守基地」10月から運用 14カ所目の新基地の利点は?
・アストラムライン延伸「西風新都線」測量費など盛り込む 広島市2021年度予算案