城端線・氷見線「電化LRT以外」並行調査 架線レスやBRTも、本年度末までに方向性



路面電車タイプの軽量軌道交通(LRT)への転換が構想されているJR西日本の城端線・氷見線について、富山県などで構成される検討会は「電化LRT」以外の交通モードの調査検討も行う。富山県は本年度2022年度末までに方向性を示す考えだ。

蓄電地式・架線レスLRTのイメージ(中国・淮安の路面電車)。【撮影:草町義和】

新たに調査対象となったのは、(1)蓄電地式・架線レスLRT、(2)電気式気動車、(3)バス高速輸送システム(BRT)など。5月27日に開かれた検討会の第4回会合で、これらの交通モードも電化LRTと並行して調査検討することで一致した。

調査費の予算額は600万円。富山県が3分の1、沿線市が3分の2を負担する。検討期間は12月28日まで。

電化LRTの事業費調査では、城端線・氷見線の線形を踏まえた電化設備整備費や低床式車両の導入を前提とした駅・ホームの改良費、行き違い施設の新設などによる信号・通信設備整備費、現在の輸送人員を踏まえた低床式車両の導入数とその費用などの算出作業が行われている。検討会は秋頃をめどに取りまとめる方針だ。

富山県交通政策局の田中達也局長は6月15日の県議会で「(電化式LRTとそれ以外の交通モードの)両方の調査結果が出ていない現時点で、結論を出す時期を決めるというのはなかなか難しい」と答弁。一方で新田八朗知事は6月17日の県議会で「検討会において本年度(2022年度)末までに方向性を示したうえで、地域交通戦略会議においても議論が進められるよう沿線市、JR西日本とともに検討を加速化していく」と話した。

「電化LRT以外」の交通モードとは

検討会が調査検討を決めた電化LRT以外の交通モードは、いずれも大規模な電化設備が不要。電化LRTに比べコスト削減を図れるかどうか調査・検討が進められるとみられる。

蓄電池式・架線レスLRTは急速充電蓄電地を搭載し、駅停車時に次の駅まで必要な電力を充電して走る。電化設備の距離を大幅に短縮できるなどの利点がある。JR東日本の烏山線やJR九州の筑豊本線で蓄電池電車が導入されているが、LRTとしての蓄電池式・架線レス電車は国内での導入実績がない。

中国・淮安の路面電車は停留場などにのみ設置された架線から充電して走る。【撮影:草町義和】

電気式気動車はディーゼル発電機で発生した電力でモーターを回して走行するもので、電化設備は不要。かつては液体式変速機を使う気動車に比べ重量が重くなるなどの短所があり普及しなかった。近年は技術力の向上による軽量化や電車部品との共通化によるコスト削減効果もあり、JR東日本の磐越西線やJR九州の大村線などで導入されている。

電気式気動車のイメージ(JR九州のYC1系)。【撮影:草町義和】

BRTは専用レーン・専用道の設置や連節バスの導入などによりバスの高速性や輸送力を向上させるもの。本来は都市内の公共交通として考案されたものだが、日本では鹿島鉄道など廃止になった鉄道路線の敷地を専用道として再整備し、BRTとして運行しているケースが目立つ。

BRTのイメージ(鹿島鉄道跡地を専用道として再整備したかしてつバス)。【撮影:草町義和】

城端線はあいの風とやま鉄道線の高岡駅を起点に城端駅まで延びる29.9kmのJR線。途中の新高岡駅で北陸新幹線と連絡している。氷見線は高岡駅から富山湾寄りの氷見駅まで16.5kmを結ぶ。

城端線と氷見線の位置。【画像:国土地理院地図、加工:鉄道プレスネット】

輸送密度の推移(JR西日本発足時の1987年度→コロナ禍前の2019年度→コロナ禍の2020年度)は城端線が4479人→2923人→2397人で、氷見線は4416人→2498人→2093人。両線ともJR西日本が4月に収支状況を発表した赤字路線(2000人未満)には含まれてないが、かつての国鉄再建法で存廃基準とされた4000人を大幅に下回っている。

JR西日本と富山県、沿線の高岡市・氷見市・砺波市・南砺市は2020年1月、城端線・氷見線の未来に向けた検討に着手すると発表。同年6月に「城端線・氷見線LRT化検討会」が発足し、両線を直通する電化LRTの事業費調査などが進められていた。

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