北陸鉄道「上下分離」で鉄道維持を提案 赤字続きもバス転換「不可能」



石川県や金沢市・白山市・かほく市・野々市市・津幡町・内灘町、北陸鉄道などの交通事業者で構成される「石川中央都市圏地域公共交通協議会」(会長:高山純一公立小松大学教授)の第1回会合が5月26日に開かれた。コロナ禍で厳しい経営が続く公共交通の現状把握や意見交換を行い、地域公共交通計画を策定する。北陸鉄道は鉄道事業の「上下分離」を検討するよう提案した。

北陸鉄道浅野川線の列車。【撮影:草町義和】

北陸鉄道は金沢市の中心部から郊外に延びる鉄道路線(石川線・浅野川線)を運営している。同社の資料によると、2014~2019年度の輸送密度は石川線が2000人弱、浅野川線は3500人前後。両線とも微増傾向で推移していたが、コロナ禍の2020・2021年度は石川線が1200~1300人程度、浅野川線が2500~3000人程度まで落ち込んだ。

石川線・浅野川線の輸送人員と輸送密度。【画像:北陸鉄道】

同社の鉄道事業はコロナ禍前から赤字だったが、高速バスや貸切バスの高収益事業で赤字を埋めていた。しかしコロナ禍により高速バスや貸切バスの収入が激減し、鉄道を支えるための収益が確保できない状況という。北陸鉄道の最終損失(連結)は2020年度が約20億円で、2021年度は約10億円だった。

その一方で北陸鉄道は石川線・浅野川線ともに沿線に学校が多数存在し、通学時間帯はバス輸送による代替が不可能な状況としている。

石川線で最も混雑する鶴来7時20分発の野町行き列車の場合、5月13日の調査でバス5台分に相当する最大257人が乗車した。現状のままバス輸送に転換すれば、朝ラッシュ時には前後の列車分も含め11台のバスが必要。道路混雑の悪化や定時性の低下が危惧される。また、バス運転士の不足が懸念される状況もあり、要員面から運行の持続性が危ぶまれるという。

北陸鉄道石川線の列車。【撮影:草町義和】

こうしたことから北陸鉄道は石川線・浅野川線のバス転換は不可能とし、線路施設を自治体などの公共機関が保有して北陸鉄道は列車の運行に専念する上下分離方式を導入するのが最も持続性が高いと主張。このほか、鉄道の持続的な運行にはバス路線の再編を伴うバスとの連携も必要としている。

協議会は今後、夏頃に第2回会合を開き、今後の公共交通に関する認識共有や必要な取組の検討などを実施。冬頃に開く第3回会合で検討結果や数値目標の整理、地域公共交通計画骨子案を決め、骨子案のパブリックコメントを実施する。来年2023年3月頃の第4回会合で地域公共交通計画の策定や事業スケジュール、実施体制、特定事業計画などの検討を行う予定だ。

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