アゼルバイジャン~アルメニア「トランプ・ルート」物流再構築へ 米国に独占開発権



ナゴルノ・カラバフの帰属先を巡って長らく対立していたアゼルバイジャンとアルメニアが物流ルートの再構築で協力する。アゼルバイジャンのイルハム・アリエフ大統領とアルメニアのニコル・パシニャン首相は8月8日、米国のドナルド・トランプ大統領の立ち会いのもと、和平の実現に向けた共同宣言に署名した。

アゼルバイジャンの鉄道。【画像:Superalbs/wikimedia.org/CC BY-SA 4.0】

共同宣言でアゼルバイジャンとアルメニアは「両国間の国内輸送、2国間輸送、国際輸送の重要性を再確認した」とし、アゼルバイジャンの本土と飛び地のナヒチェバンをアルメニア経由で結ぶザンゲズル回廊を「国際平和と繁栄のためのトランプ・ルート」(TRIPP)として整備するとした。

米国の国営メディア「ボイス・オブ・アメリカ(VOA)」などによると、アルメニアは米国に対し、TRIPPの地域における99年間の独占開発権を付与したという。

アゼルバイジャンとアルメニアは南コーカサスの国で、かつては両国ともソ連の構成国。アゼルバイジャンの本土からアルメニアを経由してナヒチェバンを結ぶ鉄道や道路もソ連時代から存在した。

アゼルバイジャン領内でアルメニア系住民が多いナゴルノ・カラバフの帰属先を巡って両国は古くから対立しており、1980年代後半のペレストロイカと1991年のソ連崩壊を機に軍事衝突を含む対立が激化。両国間の国境は封鎖され、アゼルバイジャン本土とナヒチェバンを結ぶ鉄道や道路も寸断された。

ナゴルノ・カラバフは1991年に独立を宣言して戦争に発展し、1994年の停戦後も断続的に軍事衝突が続いた。しかし2023年にはアゼルバイジャンがナゴルノ・カラバフ全域を制圧。アルメニアはロシアが支援しなかったとしてロシアへの不信感を強めた。一方でアゼルバイジャンも昨年2024年に発生した旅客機墜落事故などを巡ってロシアとの関係が悪化。この結果、アゼルバイジャンとアルメニアは米国が仲介する形で接近した。

南コーカサスと周辺地域のおもな鉄道(黒)と「トランプ・ルート」(薄赤)。【画像:OpenRailayMap/OpenStreetMap、加工:鉄道プレスネット】

アゼルバイジャンやアルメニアと国境を接しているイランの外務省は8月9日、共同宣言の署名を歓迎するとしつつ「あらゆる形態の外国による介入が地域の安全と永続的な安定を損なう可能性がある」と表明。米国の関与を牽制した。一方、タス通信によると、ロシアのオベルチュク副首相は8月15日、アゼルバイジャンとアルメニアの共同宣言への署名を支持すると表明したという。

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