「空港の外に空港駅」熊本空港アクセス鉄道のルート絞り込み、県議が疑問視



熊本県は6月18日に開かれた県議会の高速交通ネットワーク整備推進特別委員会で、熊本空港アクセス鉄道(仮称)の「整備ルート絞り込み案」を明らかにした。その際、熊本空港駅(仮称)を空港の敷地外に設ける考えも示し、出席した議員から疑問の声が上がった。

熊本空港のターミナルビル。【画像:アシュガー/写真AC】

熊本空港アクセス鉄道は、JR豊肥本線の肥後大津駅と熊本空港を結ぶ鉄道新線の構想。熊本県はこれまで、この鉄道の整備が想定される範囲として幅1.5kmのルート帯を示していたが、新たに幅500mの範囲に絞り込んだルート案を特別委で示した。

このルート案の熊本空港付近は、空港敷地内のターミナルビルから敷地外の南側を通る熊本県道206号堂園小森線までの約500mをルートの範囲としている。一方、熊本空港駅の位置は「空港南側(敷地外)の地上に整備する」とした。

このルート案から空港の敷地を除いた場合、ターミナルビルから空港駅までの距離は駐車場を挟んで最短120m程度、最長では450m程度になる。熊本県はターミナルビルから約120~200mの範囲に熊本空港駅を設けたい考えだ。

熊本空港アクセス鉄道の絞り込みルート案のうち熊本空港付近のルート(薄赤)。写真左下に見える空港駐車場(空港敷地内)の南側の緑地になっているあたり(空港敷地外)に熊本空港駅を整備するとみられる。【画像:熊本県】

これに対して議員からは「なぜ敷地外なのか、空港利用者からすればターミナルに近いほうがいいに決まってる」「(ターミナルビルにより近い)道路の下くらいは可能ではないのか」「ここ(敷地外)じゃないとできない、では説得力がない」などと疑問視する発言が相次いだ。

熊本県は「積極的な理由」と「消極的な理由」があると説明。積極的な理由として「開業効果の周辺地域への広がり、将来の発展性が期待できる。空港利用者だけでなく通勤・通学の需要も想定し、周辺住民の利便性向上につながる」と話した。

一方で消極的な理由として「ターミナルに近づけようとすると地下駅になる。地盤沈下などに配慮した強固な構造を採用する必要があり、費用がかかる」とし、敷地外の地上に設ける場合に比べて150億円以上の差が出ると説明した。利便性が低下しないよう、ターミナルビルと空港駅のあいだに空中回廊か地下通路を整備する考えという。

地方空港の空港アクセス鉄道の場合、JR宮崎空港線の宮崎空港駅は駅の出入口のすぐそばに宮崎空港のターミナルビルがある。仙台空港アクセス線の仙台空港駅と仙台空港ターミナルビルは50m程度離れていて、ゆいレールの那覇空港駅から那覇空港ターミナルビルまでの距離は100m程度。通路が迂回ルートになっている場合を考慮しても、おおむね150m程度で収まっている。

JR宮崎空港線の宮崎空港駅。すぐ脇にターミナルビルがある。【撮影:草町義和】
那覇空港のターミナルビルから見たゆいレールの那覇空港駅。駐車場や道路の上空に架設された連絡通路で接続している。【撮影:草町義和】
米子空港のターミナルビル。JR境線の米子空港駅へは写真の左側へ250mほど歩く必要がある。【画像:mirin1598/写真AC】

滑走路の延長に伴うルート変更にあわせて整備されたJR境線の米子空港駅は、ターミナルビルから250mほど離れている。ただし新線ではなく既設路線に追加する形で駅を整備しており、設置できる場所の制約が大きかった。

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